半年ぶりにブルベに参加してきた。4月4日の日曜日に行われた藤沢・湘南台発着で伊豆多賀から山伏峠〜修善寺〜湯ケ島〜国士峠〜冷川峠と巡るVCR横浜あおば主催の伊豆200キロ。このコースは今回で3度目だが、7年前は山伏峠の下りでリアのシフトワイヤーが切れ、国士峠、冷川峠を含む残り130キロをインナートップ縛りで走る羽目になった。5年前は真鶴付近でリアのタイヤがバーストしそうなことに気がつき、ドキドキしながらの走り。なんとかしのいだものの結局、ゴール寸前に大音響とともにバーストして最後は歩かざるを得なかったという、自分にとってはトラブル続きのコースだ。2度あることは3度あるのか。三度目の正直で気持ち良く走れるのか。


伊豆200のコース
伊豆200のコース

今回はブルベ前にリアのシフトワイヤーを交換し、リアのタイヤも新品に替えブレーキもしっかり調整して装備的には万全の態勢で臨んだ。今年に入って休日は走れない日が続き、久々のロングライドとなったのが不安材料だったが、初めてのコースではないし経験で何とかなるだろうと楽観的に構えていた。ところが天気予報が日に日に悪化。午後から雨が降り出し、夕方には本降りになるという。春の雨は冷たく峠で降られるのもイヤなので少し悩んだが、運が良ければ雨雲から逃れられるかもという淡い期待を抱いて走り出すことにした。


藤沢・湘南台のスタート地点の公園
藤沢・湘南台のスタート地点の公園

非常事態宣言が解除され、首都圏のブルベも徐々に開催され始めている。もちろんしっかり感染予防対策をしての開催で、人との接触を避けるためブルベカードをリモートにしたり、スタートや走行中、さらにコントロールポイント(PC)での密を避けるため、一斉スタートではなくスタート時間からプラスマイナス6時間の間で任意にスタートできたり、出走期間を数日間設けるなど「ニューノーマルBRM(N2BRM)」と言われる方式が取り入れられている。このブルベも通常なら100人程度がエントリーできるのだが、募集は半分の50人。また、PCもコンビニではなく国士峠と冷川峠でのフォトチェックのみとなっていた。


雨予報のためだろうか実際にスタート地点に集まったのは19人だった。午前6時前に車検を済ませてスタート。この人数なら大集団になることもないだろうが、密を避けるためほぼ最後方で走り始めた。また、雨でも走ろうという人たちばかりなのでみんな速いに決まっている。途中で次々抜かれるのはいやだからというのも理由のひとつ。


走り始めからどこを向いても向かい風状態が続く。特に海沿いの道は風が強く、気持ちのいいはずの国道1号線〜国道135号線も快適には進まない。59キロ地点の「お宮の松」到着が午前8時43分。その先の公園でトイレを済ませ、スタート前に買っておいたクリームパンをぱくつく。


熱海の「寛一・お宮」
熱海の「寛一・お宮」

伊豆多賀から標高515メートル、平均こう配10・1%、最大こう配17・8%の山伏峠へアプローチする。これまでは峠へ向かい国道から右へ分岐するY字路にあるファミリーマート前に押しボタン式の信号がありここを渡っていたのだが、なんと信号は消滅していた。ここは交通量が多く渡りづらい。なるほど、それでブリーフィングの時にこの先の信号(下多賀)を渡ってもいいと言っていたのか。


下多賀バス停を右に曲がり、JRのガードをくぐると住宅街だというのにいきなり急坂が始まる。峠までは5・1キロだが、ここが一番きつい。シッティングとダンシングをまじえながら、ぐいっぐいっと踏み込んで上って行く。時速は5〜6キロ程度。歩いてもたいして変わらない速度しか出ない。これが3・5キロほど続く。やがて左手に白い橋が見えた。ブリーフィングで「顔を(右下へ)こう傾けて見える白い橋。これを過ぎると楽になる」と言っていたが、ここか。え、楽にならないじゃんと思っていたが、少し走ると足が軽くなった。ピークまで残り1・5キロ地点だ。


楽になったといっても時速は6〜7キロ程度とそれほど変わらない。違うのは必死に回しての時速6キロと、余裕を持ちながらの時速6キロということ。ぜーはーいってた呼吸が落ち着きを取り戻した感じだが、これまでの傾斜があまりにきつすぎるから楽に感じているだけで、こう配は10%前後はあるだろう。


白い橋は「下多賀山伏大橋」という。左手には海が見える絶景が広がる。写真を撮りたいが、危険だし足付きもしたくないので止まるわけにはいかない。ここを過ぎればピークはもう少しだ。


70・3キロ地点の山伏峠到着は午前9時55分。プライベートを含め4度目の登坂となったが、リアのギアを11速にして30Tを導入していたこともあり、いつもながらのきつい上りだが今回が一番楽だった気がする。ところが7年前は午前9時16分に到着していた。40分以上遅かった。年には勝てないのか。



「たったの200キロですが、峠が3つもあるお得なコース。伊豆半島の海岸線はもとより山葵田などは他では見られない景色となっております」という謳い文句のこのコースだが、観光地を巡るだけあってもちろんグルメも楽しめる。山伏峠を下った修善寺駅でお気に入りとなった「武士(たけし)のあじ寿司」(税込み1296円)をゲットし、駅前のベンチで頬張った。こちらは「静岡産のこしひかり、伊豆の鯵、伊豆松崎の桜葉、伊豆天城の山葵。伊豆のこだわりの幸を」という謳い文句。何度食べても絶品の味だ。


修善寺駅。ここは静かだが駅構内は人でごった返していた
修善寺駅。ここは静かだが駅構内は人でごった返していた
武士のあじ寿司
武士のあじ寿司
あじがたっぷり入った武士のあじ寿司
あじがたっぷり入った武士のあじ寿司

修善寺駅は人でごった返し、周辺の国道も渋滞していたが、この後のコースの狩野川沿いの県道(修善寺天城湯ケ島線)はアップダウンがあるものの、ほとんど車の通らない快適な道だった。ブルベのコースは車の通行量の少ない道、安全な道、右折の少ないコース作りとよく考えられているので、きつい上りはさておき、安心して走れるのがいい。それだけ実際にあちこち走っているんだろうスタッフには頭が下がる思いだ。


国道414号線から湯ケ島宿を左折して向かう、国士峠、そして冷川峠へ続く道も車の姿はほぼ見なかった。静寂の中を黙々と上り、鳥のさえずりに驚かされる。これぞサイクリングですな。


国士峠はもちろん山伏峠に比べれば緩く、湯ケ島宿からピークまで4・8キロで、平均こう配6・6%、最大こう配10・2%。だが、山伏での足の疲れが取れないのか足が重く、結構きつく感じられた。ピーク付近は緩くて「あれ、通り過ぎた?」というくらいピークの雰囲気がない。標もつい数日前に変えられたらしく綺麗になっており、あやうく通り過ぎるところだった。99・1キロ地点となるここがPC1で、到着は午前11時51分。フォトチェックなので峠の標とブルベカードを写真に撮る。通過時間は今回は関係ないようだが、貯金は45分ほどだった。


国士峠。標高521メートル
国士峠。標高521メートル
通過チェックのためブルベカードと国士峠の看板をスマホで撮影。実際は名前の書かれたページを撮影する
通過チェックのためブルベカードと国士峠の看板をスマホで撮影。実際は名前の書かれたページを撮影する

ここからの下りはこれまでなら時間の挽回のためぶっ飛ばすのだが、今回は下りの途中にある筏場のわさび田へ寄ろうと思っていた。静岡県の棚田10選のひとつで、12年に公開された映画「わが母の記」(役所広司、樹木希林さん、宮﨑あおいら出演)のロケ地。伊豆市の公式サイトによると、約15ヘクタール、東京ドーム3個分がすっぽり収まる広さに1500枚のわさび田の棚田が広がっているそうだ。のどかな山奥に突然現れる圧巻の風景をしばし楽しんだ。これもサイクリング。快感のダウンヒルの途中にストップするなんて、還暦を過ぎてようやく大人の走りができるようになったかも。


伊豆・筏場のわさび田
伊豆・筏場のわさび田

3つ目の冷川峠は距離3・7キロ、平均こう配5・2%、最大こう配8・2%とさらに緩くなる。ピーク付近はクネクネ道となるので分かりやすいが、ピーク手前に峠への小さな道標があり惑わせる。上りはそのまま続き、ピークの先の下り始めるところに峠の看板がある。到着は午後0時52分で貯金は48分。ここで115・4キロ。残りは下りと平たんで、上りは熱海への上りと真鶴旧道ぐらい。時間内完走はまず間違いないが雨がいつ降りだすかが大問題。幸いにしてここまでは晴れと曇りで雨粒は落ちてきていない。せめて下り降りるまで降らないでくれと祈りながら伊東までの約7キロのダウンヒル開始。


冷川峠。標高379メートル
冷川峠。標高379メートル

以前から通るたびに気になっていた網代のイカメンチ。ここも下りの途中で止まりづらいところだったのだが、今回はわざわざ反対車線にある店へ渡って食べてみることにした。雨が心配だったので腰を落ち着けて定食を食べるのは諦め、1つ(170円)をテークアウト。当たり前だがさつま揚げやかまぼこのような魚の練り物のむっちりとした食感で、美味でした。あとで気がついたのだが、この店は道の両方にあったので渡る必要はなかった。


3つの峠のほかに、あじ寿司、わさび田、イカメンチと今回のブルベの目標は達成。わさびソフトは気温の関係でパス。わさび田の先にある「筏場の大崩壊」はすっかり忘れていた。次回の課題としよう。


気になる雨だが、伊東の先でなんとなく感じ始め、熱海の手前で降りだした。午後3時過ぎで予報より遅かった。トップは午後2時前に湘南台にゴールしているので雨に降られなかったも。ここでレインウエアを着用。その後は降ったりやんだり晴れたりを繰り返した。本降りは熱海、真鶴旧道、平塚の3度。幸い下りでは雨に降られず、藤沢へゴールする時間帯はやんでいた。春の雨は冷たいものだが、この日は雨が降っても気温が高めで寒さはまったく感じなかった。


ゴール。左のテントの中で受け付け
ゴール。左のテントの中で受け付け

ゴールは午後5時45分で完走タイムは11時間45分。明るいうちに帰還できたが、7年前が10時間25分、5年前が10時間45分なので大幅に遅くなっている。でも、もうタイムを気にする年でもないしね。雨雲から逃げきる足はなかったが、コースをじっくり楽しむサイクリングもいいもんだ、なんて余韻を楽しんでいたらゴール後はまた雨が降り出し、暗い中を自宅まで本降りの中を13キロほど走る羽目になったのはまいった。【メディア戦略本部デジタル編集部 石井政己】

※距離、こう配、標高などはRIDE WITH GPSの走行データによるもの