30日間で3700キロをE-Bike(YAMAHA WABASH-RT)で走り切り、佐多岬~宗谷岬の日本縦断を果たした、旅行家藤原かんいち。前例のないE-Bikeによるチャレンジ。運動不足の61歳の中年男にできるのか!? 一体どんな旅だったのか!? 激動の30日間を旅日記で振り返ります。


しまなみ海道の伯方島で食べた塩ソフトクリーム
しまなみ海道の伯方島で食べた塩ソフトクリーム

 Day08 2022/05/23

スタートの佐多岬から尾道まで、この1週間で走った距離が872km、1日平均にすると124km走ったことになる。目標が1日120kmなので、いいペースで進んでいる。この調子をキープできれば3500km30日間で日本縦断も夢ではなさそう。

それから苦しんでいた尻痛だが。昨日、ホームセンターで買ったサドルカバーを付けて1日走ってみたところ、以前より痛みが減っていることがわかった。もちろんサドルに跨ると痛いし、痛みがなくなることはないかもしれないが、「尻痛のため日本縦断を断念します!」という最悪の事態だけは避けられそうだ。

尾道では迷路のような路地が続く、尾道の歓楽街「新開」にある『SINGAI CABIN』というホステルに泊まった。事前決算だったので、チェックインはタブレットで予約コードを入力するだけ。人との接触はなし。ドミトリー式の部屋は各ベッドがパネルで仕切られ、カーテンを閉めればプライベートを確保できる。各ベッドに電源やヘッドライトも完備。シャワー・トイレも清潔。つくりもオシャレでまさに今どきのホステルという感じ。こんな快適な宿に1泊3000円前後で泊まれるのだから、ありがたい。こんな宿が全国にあればいいのになぁ。


尾道のホステル『SINGAI CABIN』を出発する
尾道のホステル『SINGAI CABIN』を出発する

今日はステージ05『しまなみ海道』を走る日。瀬戸内海に浮かぶ島々を7つの橋で結ぶ絶景ルートで「サイクリストの聖地」として知られている。最初の島は尾道の対岸に浮かぶ、向島。宿を出ると尾道大橋へ向かった。ところが途中で道を間違えたのか、自転車は通行できない道に出てしまった。ほかに道を探すが見つからない、仕方なく引き返し渡船で向島へ渡ることにした。最初からこの調子で大丈夫か??自分事ながら心配になる。

自転車で渡船に乗り込むと、船員さんが歩いて運賃を回収にきた。ローカルな感じがすごくいい。対岸までおよそ5分。あっという間に向島に着いた。道路を見るとブルーのラインが引かれている。これが全長約72km、尾道と今治を結ぶ『しまなみ海道サイクリングロード』。そのブルーのラインを辿っていけば、間違いなく愛媛の今治へ行くことができる。方向音痴の人にとって実にありがたいラインなのだ。


しまなみ海道のサイクリングロード。道に引かれたブルーのラインを追って今治を目指す
しまなみ海道のサイクリングロード。道に引かれたブルーのラインを追って今治を目指す

向島の道は車が少なく、離島らしいのんびりした空気が漂っていた。ブルーのラインに沿ってしばらく走ると海沿いの道に出た。遠い先に因島大橋が見える。下から見ると高く、まるで空にかかっているように見える。因島大橋・自転車歩行者同入口の案内板に従って進んで行くと、「この先有料道路」の標識が現れる。原付バイクは50円、自転車・歩行者は無料と書かれている。橋は有料道路なので車の場合は数百円取られるはず、それが無料とは嬉しい。

橋は高い場所にかかっているため、坂道はかなり急勾配。こんな時E-Bikeは電動アシストが威力を発揮してくれる。坂をグイグイ気持ちよく登って行く、息が上がることなく因島大橋の入口に到着した。橋は上下二層になっていて、上が自動車道、下が自転車歩行者道になっている。柱や金網があるため開放感はイマイチだが、隙間から見える景色は絶景だ。

戦国時代に活躍した村上海賊、八朔の発祥の地などとして知られる因島に上陸。島の真ん中あたりにある公園で休憩していると、農家のおじさんが声をかけてくれた。九州から来た話をすると「家からみかん持ってくるから、ここでちょっと待ってて」といって軽トラで家からみかんを持って来てくれた。「時期外れで、形も悪いけど、味はいいから」とみかん(清見?)を4つ手渡される。僕のために取ってきてくれるとは、ありがたい。優しさに胸が温かくなる。


因島の農家のおじさんが分けてくれたみかん。甘くておいしかった
因島の農家のおじさんが分けてくれたみかん。甘くておいしかった

次はアートとレモンの島、生口島。この島へ来たら、やっぱり『ドルチェ』のジェラートは外せない。しまなみ海道サイクリングロード沿いにある店で、地元の素材を使った35種類以上もあるジェラートが人気。汗をかいた後に食べる、冷たく甘いジェラートは最強のご褒美。海を眺めながらピスタチオ&イチゴのジェラートを食べる、至福の時間となった。


生口橋の上から瀬戸内海と生口島を眺める
生口橋の上から瀬戸内海と生口島を眺める
生口島にある『ドルチェ』で食べたジェラート
生口島にある『ドルチェ』で食べたジェラート

次の橋は国内最長の斜張橋、多々羅大橋。橋は走りやすく、瀬戸内海の眺めも素晴らしかった。橋を下ったところにあるのが『道の駅・多々羅しまなみ公園』。橋の眺められる海沿いにあり、レストランや産地直売所、観光案内、レンタサイクルなどの設備が揃う、格好の休憩スポット。

まずは『サイクリストの聖地』記念碑へ行きE-Bikeと多々羅大橋を入れて記念撮影。これで僕も正真正銘サイクリストの仲間入りだな(?)。外に並んだテーブルに座り、売店で買った鯛カツバーガーをパクリ。海を眺めながら食べると特別おいしく感じる、旅に出てよかった♪と思う瞬間だ。


多々羅大橋の途中に書かれた県境線。旅は広島県から、四国・愛媛県へ
多々羅大橋の途中に書かれた県境線。旅は広島県から、四国・愛媛県へ
大三島の道の駅今治市多々羅しまなみ公園にある、サイクリストの聖地の記念碑
大三島の道の駅今治市多々羅しまなみ公園にある、サイクリストの聖地の記念碑
平塚カメラマンと一緒に鯛カツバーガーでランチタイム
平塚カメラマンと一緒に鯛カツバーガーでランチタイム

本四連絡橋の中で最初にできた大三島橋を渡り伯方島へ上陸。伯方島といえば「塩」が有名、ということで、『道の駅・伯方S・Cパーク』に立ち寄り、塩ソフトクリームを食べる。10年くらい前、初めて食べたときは「え?塩味のソフト?」イメージが湧かず躊躇したが、食べてみると塩味がミルクと合わさると味が深まり、いい感じ。それから大ファンになった。

島めぐりのラストは大島。広々とした伯方・大島大橋を渡って大島へ上陸する。しまなみ海道の旅も終わりに近づいている。このまま終わってしまうのが寂しいので、瀬戸内海の景色を眺めながらゆっくり進んで行く。自動販売機を見るとロードバイクをこいでいる愛媛県イメージアップキャラクター『みきゃん』がドーンと描かれていた。さすがサイクリストの聖地、自動販売機も違う。明るい絵に元気をもらい、来島海峡大橋へ向かう。


伯方・大島大橋。下から見上げるとその大きさと高さがよくわかる
伯方・大島大橋。下から見上げるとその大きさと高さがよくわかる
愛媛県イメージアップキャラクター『みきゃん』とそれをじゃまする『ダークみきゃん』の絵が楽しい
愛媛県イメージアップキャラクター『みきゃん』とそれをじゃまする『ダークみきゃん』の絵が楽しい
全長約72kmの『しまなみ海道サイクリングロード』案内板には、マップのほか橋の概要、橋の区間距離、高低差などが記されている
全長約72kmの『しまなみ海道サイクリングロード』案内板には、マップのほか橋の概要、橋の区間距離、高低差などが記されている

右左へカーブ、最後に小山をグルッとループすると来島海峡大橋に出た。全長約4kmに及ぶ三連つり橋は壮大。まさに、しまなみ海道のクライマックスという感じだ。橋を渡り終えると、先がループ橋になっていた。自転車専用の道が立体のループ橋になっているなんて、とても贅沢。サイクリストへのリスペクトを感じる。まさに「サイクリストの聖地、ここにあり」という感じだ。ループ橋を走り切ると、四国本土の今治に上陸。しまなみ海道の旅は終わりを告げた。

しかし旅のゴールはここではない。宿泊地の松山までまだ50km近くも残っている。いま5時半、頑張って走っても8時半にはなるだろう。どうやら今日も夜間走行になりそうだ。気持ちを「楽しみモード」から「走りモード」へスイッチ。右手に瀬戸内海を見ながらひたすら松山を目指した。結局、今日の走行距離は135km超え、松山のビジネスホテルに着いたのは夜9時。13時間も走ったのでさすがに疲れたが、出会い、絶景ロード、橋めぐり、グルメ、走りなど…充実の1日となった。


■日付:2022年5月23日

■走行距離:135.9km

■ここまでの総走行距離:1,008km

■ルートマップ