30日間で3700キロをE-Bike(YAMAHA WABASH-RT)で走り切り、佐多岬~宗谷岬の日本縦断を果たした、旅行家藤原かんいち。前例のないE-Bikeによるチャレンジ。運動不足の61歳の中年男にできるのか!? 一体どんな旅だったのか!? 激動の30日間を旅日記で振り返ります。


E-Bikeとともに国道で最も高い場所(標高2172m)にたどり着いた
E-Bikeとともに国道で最も高い場所(標高2172m)にたどり着いた

 Day19 2022/06/03

昨日は1日の最長距離173kmも走った。15時間くらい自転車に跨っていたので、かなり疲れているはずなのに、朝からテンションが高い。これもそのはず、これからこの旅一番の山場、国道最高地点、ステージ10『志賀草津道路・渋峠』へ向かうのだ。出発の準備を整うと、中野市内のマクドナルドへ向かった。

マクドナルドの駐車場にはすでに2台のバイクが停まっていた。1台は旅の相棒、平塚カメラマン。もう1台は、荷物満載のスクーター。そう、持ち主はヨッシー、昨晩の出来事はどうやら現実だったらしい。「おはよう!」同じ年のヨッシーと出会ったのはいまから38年前のこと。バイクで北海道の旅をしているとき、同じようにバイクで旅をしていたヨッシーとキャンプ場で出会った。多くの旅人が集まるキャンプ場で、旅仲間が何人もできた、その中の1人だった。その後は手紙でやり取り、10数年前からはSNSでお互いの近況を確認するようになった。数年前から、ヨッシーは自転車の旅もしているので、先輩としてチェーンやタイヤの空気圧などのアドバイスをもらった。


自転車を部屋の中へ持ち込むことを許可してくれた中野市のビジネスホテル
自転車を部屋の中へ持ち込むことを許可してくれた中野市のビジネスホテル
ヨッシーがE-Bikeのタイヤの空気圧をチェック、足りないことがわかり空気を入れてくれた
ヨッシーがE-Bikeのタイヤの空気圧をチェック、足りないことがわかり空気を入れてくれた
渋峠へ登る前の3人衆。左から僕、平塚カメラマン、ヨッシー
渋峠へ登る前の3人衆。左から僕、平塚カメラマン、ヨッシー

『志賀草津道路・渋峠』は3人で走ることになった。しかし、役割も走るスピードも違うので、それぞれのペースで走り、途中で時々合流という感じで進んで行った。お互いのやり方を尊重しながら一緒に旅をするためには、適当な距離感が必要なのだ。国道292号一本だし、逸れることもないだろう。道路の脇に『ここは標高○○○○m』と標識が立っているので、どこまで来たか一目でわかる

上り坂をひと踏みひと踏み、確実に進んでゆく。さすがに、今日は朝からずっと上り坂なのでバッテリーの減りが早い。標高1800mを越えたところでついにバッテリー残量が0になった。32.7kmは1本のバッテリーで進んだ最短距離。長い上り坂が続いていることが良くわかる。充電済みバッテリーに交換。「よーし、行くぞ」気合を入れ、再びこぎ始める。

今日は朝から雲行きが怪しく、天気予報では雨に雷、さらに雹(ひょう)まで降るかもしれないと言っていた。しかしここまでは時々小雨がぱらっと落ちてくるぐらい、最悪の事態にはならず、持ちこたえている。

横手山ドライブインが見えてきた、ここを過ぎれば渋峠まで、あと少しだ。トンネルを抜けると『渋峠(標高2152m)』に到着。平塚カメラマンが笑顔で出迎えてくれた。ヨッシーの姿はない、どこにいるのか? 雷がゴロゴロ… 雨が降ってきたので先を急ぐ。

5分で国道最高地点(2172m)に到着。国道の脇に立つ石碑の前で記念撮影をしていると、今度はバチバチと雹がヘルメットを叩いた。黒い雲がすごい勢いで近づいてくるのが見える。「やばい、早く、下ろう!」慌ててサドルに跨り、転がるように坂道を下る。渋峠では素晴らしい景色の中を走っている姿を撮影したいと思っていたのに、そんな余裕はゼロ。ブレーキを握る手は雨でびしょ濡れ、どんどん冷えてきて、指先の感覚がなくなってきた。

スピードを抑え、慎重に下ってゆく。山の天気は、雨、風、雹、青空と激しく変化する。しばらく下ると、雨風は弱くなり、時々青空が見えるようになってきた。草津温泉まで来ると雨は完全に上がり、嘘のような青空が広がった。


渋峠へ向かう道には残雪が残る場所もあった
渋峠へ向かう道には残雪が残る場所もあった
渋峠に到着。雲行きが怪しく雷が鳴っていたので、急ぎ足で先へ
渋峠に到着。雲行きが怪しく雷が鳴っていたので、急ぎ足で先へ
草津温泉が近づくと天気は一気に回復した
草津温泉が近づくと天気は一気に回復した

コンビニの駐車場に入り休憩していると、スクーターが1台入ってきた。ヨッシーだ。遅かったのでどうしたのか聞くと「腹の調子が悪くなって…途中でいろいろ時間を取られた」と笑った。僕たちもつられて笑う。とりあえず3人とも無事で良かった。

さらに進む。群馬大津で国道292号とお別れ、国道145号で沼田へ向かう。午後7時、先行していたヨッシーが待つ『沼田健康ランド』に着いた。ローカル感漂う受付、さらにマンガルームにゲームコーナー、古き良き時代の健康ランドという感じだ。荷物を部屋に入れ、ひと風呂浴びると浴衣になった。大広間へ移動してヨッシーと夕ごはん。こんな風に直接会って話すのは8年ぶりになる。お互いの家族や近況、旅のことなどをおしゃべり。冗談を言って大笑い、のんびりした時間を過ごした。旅を始める前はこんな再会が待っているとは、想像もしていなかった。友よ、会いに来てくれて、ありがとう。


今回は原付スクーターだが、海外を自転車旅をした経験もあるヨッシー
今回は原付スクーターだが、海外を自転車旅をした経験もあるヨッシー
沼田へ向かう国道145号では渋峠の天気が嘘のような青空が広がった
沼田へ向かう国道145号では渋峠の天気が嘘のような青空が広がった
沼田では健康ランドのカプセルホテルに宿泊した
沼田では健康ランドのカプセルホテルに宿泊した

■日付:2022年06月03日

■走行距離:115.6km

■ここまでの総走行距離:2,732km

■ルート