右はカリフォルニアロールのブリトー、左はマグロをマヨネーズとチリソースで和えたスパイシーツナ入り
右はカリフォルニアロールのブリトー、左はマグロをマヨネーズとチリソースで和えたスパイシーツナ入り

 私が渡米したばかりの二十数年前は、まだまだ生魚は苦手と言うアメリカ人も少なくありませんでしたが、今やSushiはすっかりロサンゼルス(LA)では市民権を得ています。世界的に広まったカリフォルニアロールも、もともとは生魚が苦手なアメリカ人のために60年代にリトルトーキョーにあったレストランの寿司シェフがカニカマとアボカドを使って考案したものだと言われています。当時のアメリカ人は、海苔でさえ「真っ黒くて気持ち悪い」と避ける傾向があり、外側に酢飯がくるように裏巻きにして海苔を見えなくする工夫がなされたほどです。それが今ではカリフォルニアロールから発展した巻き寿司は、驚くほどの進化を遂げ、レインボーロールと呼ばれるカリフォルニアロールの上に虹に見立ててマグロやサーモン、エビなどのスライスを巻き付けたものや、サーモンとクリームチーズ、アボカドを合わせたフィラデルフィアロール、マグロをチリとマヨネーズで味付けしたスパイシーツナロール、鰻のBBQソース焼きを巻いたキャタピラーロールなどなど、日本の巻き寿司のイメージを覆す独自のロール寿司文化を作り上げています。また、ヘルシー志向の人が多いLAでは、すし飯も白米ではなく、玄米を好む人も多く、玄米寿司やベジタリアンロール、大豆から作られた薄い紙のようなソイペーパーで巻いた寿司など、日本ではお目にかかることのない不思議な巻き寿司が色々あります。

こんなに大きいですが、これで半分のサイズ。ボリュームたっぷりでランチにぴったりです
こんなに大きいですが、これで半分のサイズ。ボリュームたっぷりでランチにぴったりです

 そんなLAで最近注目なのは、寿司とメキシコ料理を代表するブリトーを掛け合わせた「寿司ブリトー」なるハイブリッド寿司です。ブリトーとは、小麦粉やトウモロコシから作られた薄皮トルティーヤに肉や豆、ご飯を豪快に巻いたもの。屋台フードの定番ですが、かなりボリュームがあり、日本人なら半分でお腹いっぱいになるくらい具だくさんなのが特徴です。そんな手軽に食べられてお腹もいっぱいになるブリトーとヘルシー料理として絶大な人気を誇る寿司が合体した「寿司ブリトー」とは一体どのようなものなのでしょう?

単純にトルティーヤで寿司ネタを巻いたものかと思う人もいるでしょうが、実際には巨大な巻き寿司と言った方が分かりやすいかもしれません。それでは太巻きと何が違うのかというと、中身の具材とそのボリュームです。使う皮はトルティーヤではなく、ソイペッパー。そしてブリトーと言うだけあり、具がびっしり詰まっています。マグロやサーモン、カニの身、アボカドなど普通の巻き寿司のネタに加えて海老やロブスターのてんぷら、鰻やキュウリ、山ごぼうなどがたっぷり入っています。他にもレタスやトマト、ケールや海藻、メキシコ料理に良く使うサルサなどを使うレシピもあり、肉入りやベジタリアン向けに野菜がたっぷりのものなどバラエティも豊か。それでいてそれぞれの食材の組み合わせとソースが絶妙でこれがおいしいんです。大きなブリトーを斜め半分に切って、豪快にいただきます。

スーパーでもお寿司コーナーに寿司ブリトーがお目見え。寿司ブリトーは注文してから目の前で作ってくれます
スーパーでもお寿司コーナーに寿司ブリトーがお目見え。寿司ブリトーは注文してから目の前で作ってくれます

 自分でカスタマイズできるフードが人気のLAらしく、お好みの具材を選んで自分だけのブリトーが作れるお店もあります。海苔かソイペッパーを選び、ご飯も白米か玄米を選択できる他、中の具材や野菜、調味料までお好みで選べて14ドルほど。ボリュームたっぷりの上にヘルシーということで、今注目の寿司ブリトーは、セレブにもの人気のオーガニックスーパー、ホールフーズや屋台でもお目にかかることができます。片手で持って食べられるので、運転しながら食べることもでき、LAっ子たちのランチに今後ますます人気となりそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)