世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、小池百合子都知事が「ロックダウン」すなわち首都封鎖の可能性を示唆したことが伝えられていますが、ここロサンゼルス（LA）では20日から不要不急の外出を控える「自宅待機命令」が発令されています。自宅待機命令とは、不要不急の外出を控えて可能な限り自宅に留まるようにとの要請ですが、生活や行動の自由はかなり制限されるため、半ばロックダウンに近い状態と言えます。日本でも起こりえるかもしれない事態に備えるため、自宅待機命令になるとどのようなことが起こるのかなど、LAの現状をお届けします。

映画の都で全ての映画館が閉鎖される異常事態に

高級ブランド店が軒を連ねるビバリーヒルズのロデオドライブにあるディールの店舗では、商品が全て片付けられていました

現時点では外出のための許可書は必要なく、仕事や生活必需品の買い出しに出かけること、病院や銀行に行くことなどは認めているため、それらの用事がある場合は外出することはできます。ただ、ビジネスでもプライベートでも10人以上の集まりは禁止され、不要不急の外出も禁止されているため、生活に直接支障をきたさないビジネスの営業は禁止され、多くの業種で店舗が閉鎖され、娯楽施設も全て営業停止となっています。違反すると罰金が科せられる場合があると伝えられています。LA以外の場所にある別荘などに移動することも事実上認められていないようです。

自宅待機命令中に営業ができない業種や店舗の例

・映画館

・遊園地やゲームセンター、ボウリング場など娯楽施設

・ショッピングモール（食料品を扱う店舗を除く）

・衣料品店

・ネイルやヘアサロン

・バーやクラブ

・スポーツジム

・ライブハウスやコンサートホール

・公園の遊具施設も利用は禁止

閉鎖されて人がいないショッピングモール

店の前に設置されたタブレットでテイクアウトのオーダーを受け付けるラーメン店

飲食店はドライブスルーと持ち帰り・宅配のみ営業が認められ、食料品店や大型量販店も多くが営業時間の短縮を強いられています。生活に必要なクリーニング店やガソリンスタンド、車の修理工場、動物病院などは営業が認められています。ただし、他の人との接触を避けるためにソーシャル・ディスタンシングとして6フィート（約1.8m）離れることが求められているため、スーパーマーケット等では一度に店内に入れる人数を制限しており、店の前に6フィート間隔で順番が来るまで並ぶ必要があります。スターバックスは従業員との接触を避けるため、実店舗は全て閉鎖して現在はドライブスルーのみ営業を続けています。また、レストランやカフェでも事前にオンラインやアプリ、電話等で注文してから店の前で車に乗ったまま受け取れるカーブサイドピックアップと呼ばれるシステムを導入している所も多くあります。

一方で、ソーシャル・ディスタンシングを保ちながら外に出て散歩やジョギングなど運動をすることは認められています。当初は州立公園やビーチはオープンしていましたが、最初の週末に大勢の若者が一部のビーチや公園に殺到して人ごみができたことに激怒したカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は即座に州立公園やビーチを閉鎖することを決め、現在は自宅周辺などで他人と接触しないよう距離を保っての散歩や運動のみが可能となっています。複数人で外でたむろしているとパトロール中の警察官に声をかけられる可能性もあります。

自宅待機命令が出た最初の週末に公園でピクニックする若者。この翌日に公園やビーチは閉鎖に

ソーシャル・ディスタンシングを保ってカフェに並ぶ人。店内には入店させず、入り口でオーダーを受け付けている

介護や買い出しの手伝いなど緊急を要する場合以外の家族や友人との面会も控えるよう要請されており、自宅待機中でも自宅に家族や友人を呼んでホームパーティーを開くことはできません。10人以上の従業員がいるオフィスでは在宅勤務が求められています。学校は一斉休校となり、多くの大学も授業はオンラインに切り替わり、寮の滞在が認められない所もあるようです。ただし、保育園は12名以下のグループでの営業を認められています。バスや地下鉄などの公共交通機関は運行しており、郵便局も営業していますが、高齢者施設や病院は感染防止から家族の面会も禁じられています。

教会の日曜日の礼拝も当面は自粛され、冠婚葬祭にも影響が出ています。結婚披露宴の延期はもちろん、葬儀を予定通り行えない遺族もいます。筆者も参列を予定していた知人の葬儀が急きょ政府の要請で行えなくなり、ごくわずかな家族のみの密葬となりましたが、家族や親しい人と最後のお別れさえできないケースも増えています。（米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も）