つい半年前まで誰一人としてマスクを着用していなかったカリフォルニア州で、ついに自宅以外の場所でのマスク着用が義務化されました。新型コロナウイルスがアジア各国で拡大していた2月には、空港でアジア系の人がマスクをしている姿を見かけることはあったものの街中でマスクをしている人は皆無で、まさかこんな短期間でマスク着用が義務化される日が来るとは想像もしていませんでした。

LAのビーチではマスク着用は義務です
LAのビーチではマスク着用は義務です
屋外ショッピングモールでも全ての人がマスクをつけるよう求める看板が
屋外ショッピングモールでも全ての人がマスクをつけるよう求める看板が

ここロサンゼルス(LA)では先月からすでに公共の場でのマスク着用は義務化されていましたが、郡によって対応はまちまちでLAを一歩出てしまえば近隣の街ではマスク着用を推奨しているものの義務化はされておらず、「かなり面倒」という声が聞こえていましたが、これによって州内全ての場所で自宅から一歩外に出たらマスクを着用しなければならなくなりました。「マスク」と言っても使い捨てのサージカルマスクや洗える布マスク以外にもバンダナやスカーフなど鼻と口元を覆うことができるフェースカバーであればよいとされており、今では街中の路上やファーマーズマーケットなどでも様々なタイプのマスクやフェースカバーが売られています。買い物時や公共交通機関、タクシーなどの乗り物に乗車する時はもちろん、レストランや先日から営業が再開されたスポーツジムでも入店時には必ずマスクを着用する必要があります。例外としてレストランでの飲食時と外での運動や散歩で他人と1.8mの社会的距離が保てる場合は外しても良いとされています。スポーツジムでも他人と距離を保ってのワークアウト時の着用は個々の判断に委ねられているようです。ただし、LAではビーチでも水の中に入って泳いだり、サーフィンをしている時以外はマスクの着用は義務化されており、ハイキングトレールや屋外のショッピングモール等でもマスク着用は必須です。

街を歩く人たちもフェースカバーをして他人と一定の距離を保っています
街を歩く人たちもフェースカバーをして他人と一定の距離を保っています
飲食が再開したレストランでマスクを片耳にかけたまま食事をする人
飲食が再開したレストランでマスクを片耳にかけたまま食事をする人

ギャビン・ニューサム知事はマスク義務化について、「顔を覆っていない人の数があまりに多い。これまでの新型コロナとの闘いにおける進展がリスクにさらされている」と指摘し、経済活動を再開させるにあたって他人にうつさないためにも「一人ひとりが、安全に行動するように」と求めています。全米の中でも早期に経済活動をストップさせて自宅待機命令を出したカリフォルニアはこれまで爆発的な感染拡大を防いできましたが、経済活動を再開させたことに加えて、5月末のメモリアルウィークエンドの3連休で人の流れが増えたこと、先月末から連日行われている白人警察官による黒人男性殺害事件の抗議デモに多くの人が集まっていることなどが要因で感染が拡大傾向にあることが背景にあると指摘されています。実際にLAでは今週に入って1日の新規感染者数が過去最多となる2000人を超えており、南部オレンジ郡や東部リバーサイド郡でも感染者数が急増しています。特にLAでは数万人規模のデモが連日行われており、保険当局も参加者は検査を受けて自主隔離するよう促しているほど感染拡大が懸念されています。

マスク姿で抗議デモを行う人たち
マスク姿で抗議デモを行う人たち
街中にはマスクのビルボードも
街中にはマスクのビルボードも

そんな中、LAでは19日からバーやワイナリー、ネイルサロン、タトゥーショップの営業再開が認められます。知事は市中感染がネイルサロンで発生したとして他のビジネスが再開された後も当面の営業再開を認めていませんでしたが、これでほぼ全てのビジネスが営業を再開させることになりました。残る映画館も来月の再開を目指しており、今後は状況を見ながら小規模なイベントなども開催が認められていくものと見られています。一方で、経済活動再開に伴って人々の間に気の緩みが出ており、すでにコロナはなかったことのように振る舞う人も増えていることから、マスク着用義務化で感染予防対策を怠らないよう気を引き締める効果はあるかもしれません。

「マスクをしてない人にはサービスしません」と張り紙をするレストランも
「マスクをしてない人にはサービスしません」と張り紙をするレストランも

営業を再開したレストランで食事をしている人たちを見ると本来は衛生面で良いとはされていないマスクを顎にずらして飲食する人が多いのが気になる他、こまでもマスク着用を拒否してトラブルになった例も度々報じられているので、今後はマスクの正しい扱い方と共にマスク着用義務化の是非にも注目が集まりそうです。これからのニューノーマルではマスクもファッションの一部となっていくのかもしれませんが、本格的な夏到来を前にマスク着用がどれほど定着するのか疑問も湧いてきそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)