カリフォルニア州が15日、1年3カ月にも及んだ新型コロナウイルスの感染拡大に伴う規制措置を解除し、経済活動を全面再開させました。カリフォルニア州は昨年3月中旬に全米50州のトップを切ってロックダウンに踏み切って以降、今日まで厳しいコロナ対策が講じられてきましたが、今日から店舗や飲食店での入店制限やソーシャルディスタンスの確保が撤廃され、ワクチン接種者はマスク着用の義務もなくなりました。大リーグのロサンゼルス(LA)・ドジャースも2019年以来初めてスタジアムに満席の観客を入れて試合を行い、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオなどテーマパークも入場制限がなくなり、さっそく大勢の人で賑わっていました。

ビバリーヒルズではマスクなしで買い物を楽しむ人の姿も
ビバリーヒルズではマスクなしで買い物を楽しむ人の姿も

カリフォルニア州は現在、10万人当たりの陽性者数は2人で、陽性率もピーク時の17%から0.7%まで減少しており、ワクチン接種率完了者は住民の47%(1回目の接種を終えた人は59%)になっていることが再開に踏み切る要因となっていますが、街の声を聞くと歓迎ムードと共に依然として収束には至っていない現状に不安を抱く人も少なくはないようです。全面再開でコロナ禍前の日常に戻ったLAの街がどうなっているのか現地の様子をレポートします。

LAも今日から、公共交通機関や空港、病院、介護施設など特別な場所を除いて、ワクチンの接種を完了した人(2回目またはJ&Jは1回の接種後2週間が経過した人)は、マスクを着用する義務がなくなりました。これは、飲食店や映画館、スーパーマーケットなど屋内にも適用されますが、ワクチン未接種者は引き続きマスク着用が義務付けられています。しかし、ワクチンの接種の有無を証明する手段はなく、事実上個々の良心に委ねられているのが現状です。

ソーシャルディスタンスが解除され、密になって列をなす人の姿が
ソーシャルディスタンスが解除され、密になって列をなす人の姿が
マスク着用義務化が撤廃されましたが、マスク姿のマネキンは健在
マスク着用義務化が撤廃されましたが、マスク姿のマネキンは健在

近所のスーパーマーケットを回ってみましたが、入口にこれまでと同様にセキュリティーが立っているもののマスク着用に関するチェックはなく、すんなりと中に入ることができました。店内を見渡すと、店員は見る限り100%全員がマスクを着用しており、客も8割程度の人がマスクをしています。ただ、前日までレジ周辺の床に記されていたソーシャルディスタンスを保つための立ち位置のマークは消えており、他人と距離を開けずレジに並ぶ姿は大きな変化でした。

続いて訪れたショッピングモールでも半数以上の人がマスクをしています。ユニクロでは、これまで入口に貼られていた「Face Mask Required(マスク着用必須)」のサインが消え、「2歳以上のワクチン未接種はCDCのガイドラインによってマスクを着用することが義務付けられています」という張り紙に変更されていましたが、特に入店時にチェックを受けることはありませんでした。ショッピングモールでもソーシャルディスタンスは解除され、店の前に記された並ぶ位置のマークや通路を一方通行にするための矢印はなくなっていました。

屋外ショッピングモールもマスク着用率は高め
屋外ショッピングモールもマスク着用率は高め
まだ入店制限を継続している店舗も多い
まだ入店制限を継続している店舗も多い

また、これまでは入店制限で常に行列ができていたアップルストアでは、入口に立つスタッフの姿はなく、誰でも自由に入店できるようになっていました。一方、一部の店舗では引き続き入店人数を制限して営業を続けており、店によっては従業員と客の安全確保のために独自のルールで感染対策を継続しているところもあるようです。高級ブランド店が軒を連ねるビバリーヒルズのロデオ・ドライブでも同様で、グッチやルイ・ヴィトンでは引き続き入店人数制限を行っており、店の前には行列ができていました。

屋内では今後も当面の間マスクを着用すると話す人が筆者の周りでも多くいることからこの状況はある程度想定できましたが、今日は30度を超える真夏日だったにも関わらず屋外でも半数くらいの人がマスクを着用していたことには驚きました。サンタモニカビーチでは砂浜でマスクなしで日光浴を楽しむ人は多かった一方、遊歩道やピアを歩いている人たちの多くは子供だけでなく大人もマスクをしており、「さすがロサンゼルス」と妙に納得しました。(民主党支持者の多い地域では住民の感染予防対策が徹底されている)店内に入る時や店員と話す時などにマスクを着用するため、マスクをずらして顎にかけている人や手にマスクを持っている人もおり、感染予防対策を続けている人もかなり多いようです。

サンタモニカピアでは半数近くがマスク着用
サンタモニカピアでは半数近くがマスク着用
ピアへの車の通行は現在も中止されたまま
ピアへの車の通行は現在も中止されたまま

一方で、レストランはこれまでのようにテーブルの間にスペースを設ける必要がなくなり、どこの店舗も密接して座る客で賑わっており、誰もが日常を取り戻せたことを喜んでいる様子がうかがえます。そしてそんな今日のLAの街を回ってみて驚いたことの一つが、どこへ行っても道がひどい渋滞だったこと。ここ数か月は段階的に経済活動の再開が進んでいたのでロックダウン当初よりも交通量は増えていましたが、久々にコロナ前は日常だったLAの渋滞を思い出し、多くの人が仕事に戻ったのだと改めて実感しました。

街中で何人かに話を聞いてみましたが、「ワクチン接種を終えているから安心。日常生活が戻って嬉しい」「煩わしいマスクから解放されて最高な気分」とノーマスクで買い物を楽しむ人がいる一方で、「誰がワクチンを打ったか分からないし、変異株もあるからマスクなしでみんなが出歩くのは正直不安」と話す40代の男性や「(感染者数が)ワーストからベストになって今(規制を)やめるのはクレイジーだ」と漏らす子連れの男性もいました。また、ビジネスにとっては「ようやくコロナ前と変わらずお客さんを迎えられる」と歓迎の声が多く聞かれる一方、通常営業に戻すにあたって従業員の確保に苦労しているといった声も上がっています。

累計360万人以上が感染し(2019年の人口は3951万人)、6万2000人が亡くなったカリフォルニア州は、ロックダウンから453日でようやくコロナ禍前の日常に戻ることができました。今後はコロナと共存しながら一日も早い収束を心から願うばかりです。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)