アメリカ最大の記念日である「独立記念日」を迎えた4日、全米各地で盛大な花火の打ち上げが行われ、パーティーやコンサートに大勢の人がマスクなしで密集し、アメリカの完全復活を祝う姿があちらこちらで見られました。全米各地の観光地は史上最大規模の人波であふれかえり、この1年半近く見たことがないほどの人が集い、ハグをし、バーベキューや花火を楽しみ、コロナ禍の世界がうそだったかのような祝賀ムードに包まれていました。1776年にペンシルベニア州フィラデルフィアでアメリカ独立宣言に署名したことを記念する独立記念日は、アメリカ人にとって重要な祝日の1つで、各地で花火大会やパレードが行われ、家族や友人らとバーベキューを楽しみ、お祭り騒ぎするのが恒例。しかし、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によって大規模な花火大会やイベントは中止され、集って祝うこともできなかった反動から今年はステイホームから解放された人々のお祭り騒ぎをしたいという欲求が爆発したかのような盛り上がりとなりました。1年前には想像もできなかった光景に、短期間でワクチン接種が進み、感染状況を劇的に改善させて経済を完全復活させたアメリカの底力を改めて感じた1日でした。

満員の観客でにぎわったハリウッドボウルの独立記念日コンサートの様子を伝えるロサンゼルス・タイムズ紙の記事
満員の観客でにぎわったハリウッドボウルの独立記念日コンサートの様子を伝えるロサンゼルス・タイムズ紙の記事

ここカリフォルニアは先月15日に経済活動の完全再開を果たし、ソーシャルディスタンスも廃止され、ワクチン接種を完了した人はマスクの着用義務もなくなり、ロサンゼルス(LA)でも各地で2年ぶりの独立記念日を祝う人たちでにぎわいを取り戻していました。今年は95年の歴史を持つローズボウルでの花火大会も復活し、スタジアム内では2万1000人の観客が集い、スタジアムの外でバーベキューをしながら花火を楽しんだ人なども含めると地元メディアの報道では20万人もの人出があったと伝えられています。また、野外コンサート劇場ハリウッドボウルでも恒例の独立記念日を祝うコンサートと花火大会が満員の観客を入れて開催されたほか、各地で花火の打ち上げが行われ、ビーチも大勢の人で埋め尽くされ、独立記念日を祝う人たちで街は活気に満ちていました。

20万人が楽しんだローズボウルでの花火を伝えるNBCテレビのニュース番組
20万人が楽しんだローズボウルでの花火を伝えるNBCテレビのニュース番組

その一方、アメリカがコロナに完全に打ち勝ったのかと言えば決してそうではなく、一部の州では変異種デルタ株が猛威を振るい始めているのが現状。LAでも減少していた感染者数が増加傾向に転じており、屋内でのマスク着用が再び呼びかけられる事態となっています。バイデン大統領が掲げていた「独立記念日までに18歳以上の70%が少なくとも1回のワクチン接種を終える」という目標も達成することはできず、1回の接種者は67%にとどまる中、独立記念日の祝賀イベントが再び感染拡大の起爆剤になることも懸念されています。

それでも「リベンジトラベル」という言葉が生まれた今年の独立記念日は3連休となったこともあり、旅行者が過去最高を記録した2019年の4150万人を超えることは確実だと言われ、LAでも高速道路は大渋滞。近郊の観光地ラスベガスやサンディエゴ方面に向かう道路は特に激しい混雑が見られ、旅行需要に伴って先月末からすでにガソリン価格も急騰。1ガロン(約3.79リットル)の平均がここ7年でもっとも高い4ドル30セント超えを記録し、近い将来6ドルに届くという驚きの予想まで出ています。空港も連日のようにパンデミック以降最高の利用者数を更新し続けており、ホテルやレンタカーの需要や価格も上昇。今年の旅行は例年以上の出費になると想定されるものの、「今年こそどこかに出かけたい」という人たちの衝動に勝るものはないようです。

車がまったく動かないほど大渋滞するロサンゼルス空港内の様子
車がまったく動かないほど大渋滞するロサンゼルス空港内の様子
ガソリンの値段が上がり続けるLA。2週間前には4ドル27セントだったレギュラーが、今は5ドル目前まで高騰しています
ガソリンの値段が上がり続けるLA。2週間前には4ドル27セントだったレギュラーが、今は5ドル目前まで高騰しています

しかし、経済活動の再開から半月が経過したLAは、感染力が従来よりも強いデルタ株の感染が増加しており、100~200人台で安定していた1日の新規感染者数が、先月29日には4月以降初めて400人台を記録し、今月2日には644人にまで急増。この3連休で感染の拡大が懸念されるだけでなく、経済活動の再開に伴ってリモートワークをやめる企業が増える中でオフィス内での感染拡大も心配されています。現在、LAは屋内でもワクチン接種者はマスク着用の義務はなくなり、スーパーマーケットはもちろん映画館などでもマスクをしている人が少なくなっていますが、保健当局はワクチン接種の有無に関わらず屋内のマスク着用を強く推奨するとしており、まだ当面はコロナとの戦いは続きそうです。

ワクチン接種完了者のマスク着用義務がなくなったLAで感染が再拡大し、再びマスク着用が呼びかけられる事態に
ワクチン接種完了者のマスク着用義務がなくなったLAで感染が再拡大し、再びマスク着用が呼びかけられる事態に

力強く復活を果たしたかに見えた独立記念日ですが、まだ集団免疫を作れるほどワクチン接種は進んでおらず、マスクなしの密なお祭りムードでコロナに打ち勝ったという間違ったメッセージを多くの人に与えた可能性を懸念する専門家もいます。ワクチン接種が進んでも新たな変異種に効くかどうか手探り状態でもあり、デルタ株が広がって2週間後に再び感染が爆発しないことを祈るばかりです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)