バイデン政権は先月、今月中にも18歳以上の全員を対象に新型コロナウイルスワクチンの3回目の追加接種、いわゆるブースター接種を始める計画を発表していましたが、米食品医薬品局(FDA)が17日、65歳以上と重症化リスクの高い人のみを対象とする案を全会一致で承認し、一般への3回目の接種は見送られることになりました。接種完了後に時間の経過と共に予防効果が低下し、ブレークスルー感染が起こる可能性があることを受けてのものですが、専門家は依然として重症化を予防する効果や死亡率の低下は期待できるとしています。3回目の接種は、ファイザー製ワクチンの接種完了から少なくとも6カ月が経過した人が対象で、今後正式に緊急使用の許可が出るものと見られています。モデルナ製と1回の接種で完了するジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンについては、今後追加接種の検討が行われることになっています。

3回目の接種が必要なのかどうかを巡っては、ホワイトハウスと専門家の間で意見の相違も出ていました。世界保健機構(WHO)はワクチンが不足している途上国などの接種を優先させるために3回目の接種を少なくとも年末まで行わないよう各国に呼びかけていたほか、アメリカ国内でも科学者からは反対の声が上がっていました。バイデン政権の首席医療顧問を務める国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、「安全性や有効性に関するデータを再検討して勧告が変更されることもある」と述べており、来春までのコロナ制御目標に向けて引き続き3回目の接種の検討を継続する考えを示しています。

そんな中、ファイザーは5歳から11歳の子供への接種を拡大するようFDAに申請することを発表。早ければ年内にも緊急使用が認められる可能性があると伝えられています。アメリカでは、デルタ株のまん延によってワクチン未接種の子供の感染が急増しており、各地で小児病棟のひっ迫が問題になっており、低年齢層への接種拡大には大きな期待が寄せられています。

そして、ここロサンゼルス(LA)でもワクチン義務化の動きはより一層加速しています。今月上旬に全米で2番目に規模の大きいLA統一学校区が、職員に続いて12歳以上の生徒全員にコロナワクチンの接種を義務付ける提案を可決。対象となる生徒は、11月21日までに1回目を、12月9日までに2回目を接種することが義務付けられ、医学的理由などで例外が認められない生徒が接種を拒む場合は対面ではなくオンライン学習を利用することになるといいます。

現在は12歳以上が対象となっているワクチンも近々5歳以上に拡大される見通しに
現在は12歳以上が対象となっているワクチンも近々5歳以上に拡大される見通しに

また、LA郡では先週、バーやワイナリー、ナイトクラブなどアルコールを提供する施設の屋内飲食を利用する客と従業員全員にワクチン接種を義務付けることが決まりました。10月7日までに少なくとも1回の接種を終えている必要があり、11月4日以降は接種を完了していることを証明する必要があります。一方、今回の方針にはレストランやカフェなどは含まれておらず、公衆衛生局は「強く推奨する」にとどめているため、今後方針が変更されない限り当面はワクチン証明書を提示する必要はありません。また、バーやワイナリーなどでも屋外席の利用は、ワクチン未接種者も可能としています。

バーに入店するには10月7日からはワクチンの接種証明が必要となります(NBCニュースより)
バーに入店するには10月7日からはワクチンの接種証明が必要となります(NBCニュースより)

また、1万人以上が参加する屋外の大型イベントもワクチン証明書の提示義務化の対象に加えることが発表され、参加者や従業員は接種証明または72時間以内の陰性証明書の提示が10月7日から始まります。コンサートやスポーツ観戦なども対象となるため、今後LAでこうしたイベントに参加予定の人は注意が必要です。大規模イベントの対象に含めるかどうか検討されていたテーマパークについても、同様の措置が取られることが20日に決まり、ユニバーサル・スタジオ・オブ・ハリウッドとシックス・フラッグス・マジック・マウンテンが対象になります。ディズニーランドは、LA郡のお隣オレンジ郡にあるため、義務化の対象には入っていません。

米疾病予防管理センター(CDC)が発行しているワクチン証明書(一部加工)
米疾病予防管理センター(CDC)が発行しているワクチン証明書(一部加工)

バイデン政権は20日、11月以降に日本を含むすべての国から入国する外国人に対し、ワクチン接種を義務付ける方針を発表。これによってこれまで原則として入国が禁止されていた中国や英国、EU域内からの入国も可能となり、人の往来の復活にも期待が持たれています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)