新型コロナウイルスの感染拡大によるステイホームが始まった昨年は、巣ごもり需要でアルコールの消費が増え、ビールやワインからウイスキーや蒸留酒などハードリカーまでほぼ全てのアルコールの売り上げが伸びたといわれています。ステイホームで時間を持て余し、ストレスも相まって昼間から飲んだくれてたなんて人もいたりして、「コロナが収束したらアルコール依存症の治療を受ける人でリハビリ施設が混雑しそう」という会話も聞こえてきたりもしましたが、それから2年近く経とうとしている今、今度は逆に低アルコール飲料やノンアルコールの売上が伸びています。アマゾン傘下の自然派食品スーパー大手のホールフーズ・マーケットが毎年発表している食のトレンド予想でも、来年流行しそうなトップ10に低アルコール飲料が入っており、アルコール業界にも変革の波が押し寄せています。

ハードコンブチャは、さまざまなフレーバーがあり、缶のデザインもおしゃれなのが特徴
ハードコンブチャは、さまざまなフレーバーがあり、缶のデザインもおしゃれなのが特徴

コロナ禍当初はアルコール度数の高いウオッカやテキーラ、ウイスキーなどを好む人が多かったと言われていますが、感染拡大が落ち着いてくると今度はカロリーやアルコール度数が低い健康的なアルコール飲料が求められるようになってきたようです。特にミレニアム世代やZ世代を中心にアルコールの消費量が減っており、ノンアルコールまたは低アルコール飲料を求める傾向が強まっていると伝えられています。その代表が、ハードコンブチャやハードセルツァーと呼ばれるアルコール入り炭酸飲料です。ハードはアルコール入りという意味ですが、決してアルコール度数が高いというわけではなく、むしろ炭酸飲料水感覚で楽しめる爽快感のあるお酒です。

ハードコンブチャとは、近年セレブの間で健康ドリンクとして大流行した「紅茶キノコ」として日本でも70年代にブームになった発酵ドリンク「コンブチャ」のアルコール版。アルコールを添加しているわけではなく、発酵過程で自然に微量のアルコール成分が作られることから健康志向の高い人たちの間で人気があります。マンゴーやピーチ、ハイビスカスなどさまざまなフレーバーがあり、おしゃれなデザインの缶も多いので、あまりアルコールを飲まない女性にも飲みやすいと評判です。

ハードセルツァーは種類が豊富で、大手ビールメーカーからも販売されています
ハードセルツァーは種類が豊富で、大手ビールメーカーからも販売されています

また、コロナ禍の少し前から人気が出ていたハードセルツァーは昨年、爆発的に売り上げを伸ばし、今ではビールコーナーの一角を大きく占拠するまでに急成長しています。日本でも販売されているので飲んだことがある方もいるかもしれませんが、サトウキビ由来の糖分を発酵させたものにレモンやライムなど柑橘類やラズベリー、チェリーなどフルーツのフレーバーを加えたものです。チュウハイに似ていますが、焼酎やウオッカなどの蒸留酒は使っておらず、原材料は基本的にアルコールとなるサトウキビとフルーツやハーブなどのフレーバーに水とシンプルで、甘さも比較的控えめで、すっきりした味わいが特徴です。細長い缶もおしゃれで、女性だけでなく男性ウケも良いのが好調な売り上げにつながっているようです。1缶あたりのカロリーは100kcal以下と低カロリーで、アルコール数も2~5%と低く、グルテンフリーのものもあり、体形などを気にする若者にも好まれています。

1箱に4種類のフレーバーが入ったハードセルツァー12本入りが、セールで19ドルほどで売られています
1箱に4種類のフレーバーが入ったハードセルツァー12本入りが、セールで19ドルほどで売られています

日本では、ノンアルコールビールを中心にさまざまなノンアルコール飲料が売られていますが、アメリカではノンアルコールはこれまであまり主流ではありませんでしたが、アルコール業界でも健康志向が高まる中で、大手ビール会社もついにノンアルコールビールの販売に乗り出しています。ハイネケンが2019年にアメリカでノンアルビール「ハイネケン0.0」の販売を始めたのを皮切りに、バドワイザーなど大手も次々に参入し、ハードセルツァーに対抗すべくプロモーションにも力を入れています。また、最近はビールのみならずノンアルコールのウオッカやジン、ラムなども誕生しており、いずれもボトルの見た目や味わいが本物に似ていることが特徴とされています。これからは場所や気分でウィズアルコールかアルコール抜きかを気軽に選べる時代がやって来そうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)