今年は最も早い梅雨明けで水不足や電力不足が懸念されている日本ですが、異常気象が続くここカリフォルニア州南西部でも深刻な干ばつの影響で水不足と電力不足の恐れが高まっています。カリフォルニア州は2000年以降深刻な干ばつに見舞われており、山火事の発生も急増していますが、今年は雨季にあたる冬に雨がほとんど降らなかったことから3年連続で深刻な水不足が起きています。ロサンゼルス(LA)・タイムズ紙によると、LAでは昨年12月に大雨を記録して以降、1月からの3カ月間はまとまった雨は降っておらず、史上もっとも乾燥した冬になったとのこと。2015年以来となる深刻な状況で、今年は過去1200年で最悪の干ばつになる見通しだと専門家は指摘しています。

乾燥したLAの山。今年の夏は記録的な暑さで電力不足も懸念されています
乾燥したLAの山。今年の夏は記録的な暑さで電力不足も懸念されています

ニューサム州知事はすでに3月末の時点で、水不足への対策として緊急時対策ステージ2の発動を各水道局に要請し、節水対策の強化を求めています。南カリフォルニアの一部地域では十分な水を確保できない状況にも陥っており、LAを含む南カリフォルニア最大の水供給会社メトロポリタン水道局は4月末に水不足の緊急事態を宣言。6月1日から600万人以上の住民を対象に庭の芝生への水やりなど屋外での散水を週1日に制限するよう指示し、水の使用量を35%削減することを目標に掲げています。違反者には罰金が課せられるほか、水を無駄遣いする家庭には節水装置を設置することも計画中だといいます。

節水を呼び掛ける広告
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筆者は20年以上LAで暮らしていますが、住宅地ではどこのおうちもフロントガーデンの芝はきれいに手入れされ、観葉植物や花が咲き乱れる景観がこれまでは当たり前でしたが、干ばつが進んだ近年は緑を見る機会が激減。特にここ数年は節水制限から青々していた芝は枯れて茶色くなる家庭が増え、庭の芝地を撤去して水やりが不要な砂利にしてサボテンや多肉植物など干ばつに強い種に植え替える住宅も増えています。数年前から飲料水用に提供されている水源を確保するため、州はスプリンクラーによる水やりが不要な庭に改修するための補助金制度を行っており、芝生が美しい家を見かけることが少なくなり、自宅周辺の景観もすっかりと変わって砂漠化しています。公共施設や州内の大学、商業・工業施設においても装飾用の芝生への飲用水の使用を禁止しており、街中から緑がどんどん減っています。また、近年倍増している大規模な山火事の影響も大きく、送電線の火災による電力不足も発生しており、今年の夏は水だけでなく、電力の不足も懸念されています。

住宅地では人工芝も増えています
住宅地では人工芝も増えています
節水制限で自宅前の芝生が枯れてしまった家
節水制限で自宅前の芝生が枯れてしまった家
芝生から水やり不要な砂利に替える住宅も
芝生から水やり不要な砂利に替える住宅も

干ばつや水不足の影響は一般家庭にとどまらず、農業にも大きな影響を及ぼしています。カリフォルニアは米国内のおよそ3分の1の野菜を生産する国内最大の農業大国として知られていますが、州は深刻な干ばつを受けて農業用水の削減と地下水のくみ上げを制限。農家の収入減や雇用への影響だけでなく、この状況が長期化すれば野菜や果物など農作物の供給不足が起き、食料危機が起こることも懸念されています。すでに作付けを半減させる農家も出ており、ファーマーズマーケットに並ぶ野菜や果物も例年に比べて大きく変化しているのが目で見て分かり、種類や量だけでなく、これまでに比べて質も低下しているように感じられます。カリフォルニアは米やイチゴの一大産地であるほか、アーモンドは世界シェアの8割を占め、北部はカリフォルニアワインの産地としても知られているだけに、今後はさまざまな分野で干ばつの影響が出てきそうです。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)