ホリデーシーズンの到来を告げるサンクスギビング(感謝祭:11月最終木曜日)が数日後に迫っていますが、今年は記録的なインフレが感謝祭の食卓を直撃しています。400年以上前に始まった秋の収穫を祝う収穫祭が由来とされる感謝祭は、家族が集まってターキー(七面鳥)の丸焼きを食べるのが習わしです。そのため、この季節になるとスーパーマーケットには大小様々なターキーが並び、飛ぶように売れる光景が風物詩となっています。

最近ではすでに調理されたターキーをレストランやマーケットで購入する家庭も増えていますが、家族構成や集まる人数によってターキーの大きさを選び、自宅のオーブンで朝から焼くのが伝統です。付け合わせにはマッシュポテトやさやいんげん、芽キャベツのローストが人気で、他にもグリーンサラダやコーンのクリーム煮、コーンブレッドなども食卓に並びます。

丸ごとのターキーがこんな感じでスーパーには並んでいます
丸ごとのターキーがこんな感じでスーパーには並んでいます

しかし、今年は急激なインフレの影響でターキーの値段がかつてないほど高騰しているのはもちろん、ここロサンゼルス(LA)では野菜の値段も50~100%アップという異常事態になっています。地元テレビ局の報道によると、ここ最近でレタス類は100%、さやいんげんとトマトは50%、コーンは80%も値上がりしているといいます。さらに感謝祭の当日が近づくにつれて、これらの食材が品薄になることも予想されており、「早めの購入」または「冷凍野菜での代用」が呼びかけられています。確かに筆者も先日、買い物に行った際に野菜コーナーに並ぶ野菜がいつもより少ないと感じましたが、需要と供給のバランスから今後サラダの具材など生野菜が入手困難になるようで、感謝祭を前に野菜探しに奔走することになるかもしれません。

ターキーと一言で言ってもオーガニックからコーシャ(ユダヤ教徒が食べても良いとされる清浄な食品)まで種類も豊富です。筆者の自宅近くのスーパーでは安いもので1パウンド(約453グラム)1.99ドルから売られており、オーガニックになると3.49ドルします。大きさにもよりますが、一般的な大きさのターキーが30ドルほど。これがオーガニックの立派なターキーになると50ドル超えです。報道によると、約7キロの平均的なターキーの全米平均価格は、昨年と比較して5ドル値上がりして23.99ドルになっているといいます。

さらにスタッフィングと呼ばれるお腹部分の詰め物や付け合わせの野菜、クランベリーソース、グリーンサラダやブレッドなど伝統的な料理を揃えようと思うとかなりの出費になります。他にもデザートのパンプキンパイやワインなど飲み物まで、フルコースとなればなおさらです。パンプキンパイを作るミックスや牛乳、ロールパンなども平均で50セント以上値上がっており、トータルで見ると伝統的な感謝祭の食事を用意するには昨年比で20%も高くなるそうです。

種類や大きさによって値段はまちまち。これをオーブンに入れて焼きます
種類や大きさによって値段はまちまち。これをオーブンに入れて焼きます

このインフレは一般家庭だけでなく、ホームレスや低所得者に感謝祭の食事を毎年提供している慈善団体にも影響を及ぼしています。LAのある団体では、毎年ターキーを寄付してくれる住民からの寄付が今年は減っているといい、必要な数のターキーや食材が集められない可能性があるそうです。多くの団体が食事を提供するための寄付金も募っていますが、10人に感謝祭の食事を提供するには、昨年に比べて11ドル、2年前からは20ドルも値上がり、平均64ドルが必要で、増え続ける路上生活者全てに必要な食事を配ることも難しくなっているようです。

LAではすでに12個入りの一般的な卵の値段が7ドル近くなるなど食費の値上がりが家計を直撃しており、ガソリン価格の高騰も相まって、今年はターキーを諦めてより安価のチキンにメニューを変更する家庭も多いといいます。また、低所得者に食材を配給するフードバンクなどを活用したり、価格が安い冷凍ターキーに変えたり、量や品数を減らすなど値上げ対策に頭を悩ませているようです。

ターキーより安いチキンが今年は人気
ターキーより安いチキンが今年は人気

それでもコロナ禍で3年ぶりに家族が揃うことが嬉しいと話す人もおり、24日は文字通り食事を食べられることに感謝しながら過ごす1日になりそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)