アメリカの一部地域で、10月14日に「グレート・ウェスタン・リング・オブ・ファイヤー・エクリプス」と呼ばれる金環日食が起きます。
残念ながら日本では見ることはできませんが、アメリカ、メキシコ、ブラジルなど数か国で観測することができます。オレゴン州で現地時間午前9時13分に始まり、ブラジル大西洋岸で午後5時前に終わります。アメリカ大陸で金環日食を見ることができるのは非常に希少だそうで、世紀の天体ショーを楽しみにしている人も多いようです。
英語では「リング・オブ・ファイヤー(炎の輪)」の名で知られる金環日食は、月が地球から最も遠い位置にある時に地球と太陽の間を通過する際に起こるものです。小さな月が太陽を完全に覆い隠すことができず、炎の輪のように暗い月の周りに輝くリングが見える現象です。
最長で4分半近く観測できる今回の金環日食は、ここロサンゼルス周辺では見ることができませんが、カリフォルニア州の一部地域やお隣のネバダ州、オレゴン州、ユタ州、ニューメキシコ州など複数の州の上空を通過します。それらの州の通過ルート下にある国立公園などに滞在して天体ショーを楽しむ観測ツアーが今、人気になっています。
世紀の天体ショーを楽しんでみたいという方に、西海岸近郊のおすすめ観測スポットを紹介します。
●モニュメントバレー
西部劇の舞台として有名なアメリカの原風景が楽しめるユタ州とアリゾナ州境にまたがる荒野「モニュメントバレー」は、ラスベガスから車で6時間、飛行機なら近郊のペイジという街が拠点となります。
ここは国立公園ではなく、アメリカン・インディアンの中でも最大の部族として知られるナバホ族の居住区ですが、パーク内は観光客の立ち入りも可能。一般公開されているエリアは、自家用車などで移動することができるほか、ナバホ族のガイドによる非公開エリアのツアーなども実施されています。
ジョン・フォード監督が愛した場所として知られ、「駅馬車」(39年)「荒野の決闘」(46年)「黄色いリボン」(49年)など数々の名画のロケ地になっており、監督がお気に入りだった撮影スポットの展望台には「ジョン・フォード・ポイント」という名前が付けられています。同監督が撮影のために滞在していたロッジに宿泊すれば、目の前で金環日食を楽しむことができます。
●レイク・パウエル
日食帯の下にあるアリゾナ州北部では、全米で2番目に大きな人口湖「パウエル湖」からも見ることができます。ペイジの北東に位置するパウエル湖は、アリゾナ州だけでなく、ユタ州、ネバダ州、カリフォルニア州などにも欠かせない電力と水の供給源となっています。
日本人にはあまり知られていない場所ですが、8つの国立公園を含め世界屈指の公園郡があるアリゾナ州境の「グランドサークル」の中心にあり、クルージングも楽しめる地元では人気の観光地です。マリーナからボートに乗り、湖の上から日食を楽しむことができます。
●フォー・コーナーズ
4つのコーナーという名前の通り、ユタ州、アリゾナ州、コロラド州、ニューメキシコ州の4つの州の境界線が交わる場所。今回の日食は、この場所の真上を通過します。
特にどうということはない場所ですが、意外にもアメリカで4つの州の境界線が一点で交わっているのはここだけ。州名と州境を表示した記念碑が設置されているので、記念撮影するには最適です。また、周辺には国立公園や国定公園などグランドサークルの見どころも点在しているので、ここで日食を見た前後グランドサークル巡りをするのもおススメです。
●クレーター・レイク国立公園
オレゴン州南西部に位置する湖「クレーター・レイク国立公園」は、アメリカで一番深い湖。ポートランドから車で4時間の距離にあり、透明度が高く、美しいブルーの水はとても美しく、夏のベストシーズンには大勢の観光客が訪れる人気の国立公園です。天気が良ければ、ここから4分以上金環日食を楽しめます。
●ブライスキャニオン国立公園
ラスベガスから車で4時間のユタ州南西部にあるブライスキャニオン国立公園も、4分半近く日食が観測できることから人気のスポットとなっています。長年の水や氷、風による浸食で生まれた尖塔郡が美しく、ユニークな地形はとても絵になります。フードゥーと呼ばれる独特な土柱の尖塔郡を眺められる展望ポイントがいくつかあるので、お気に入りの場所から金環日食を観測するのがおススメです。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)