5番街のシンボルとなったアップルストア。後ろに佇む白い高層ビルがGMビル
5番街のシンボルとなったアップルストア。後ろに佇む白い高層ビルがGMビル

 ニューヨークで人気ナンバーワンのスポットといえば、なんといってもココ。アメリカ最強の小売店ともいわれる、アップルストアです。アップルは06年5月、高級店が建ち並ぶマンハッタン5番街の58と59丁目の間に旗艦店をオープン。その巨大なガラスキューブ型のエントランスはいまや、5番街のシンボルとなっています。なんと24時間365日オープンということで、毎日、買い物客やツーリストで賑わう人気の場所となっているわけですが、今回は、11年に死去した前CEOスティーブ・ジョブズ氏が、5番街にアップルストアをオープンするまでの裏話をご紹介します。

5番街を挟んで向かい側にはプラザホテル。両隣にはカルティエと高級百貨店バーグドルフ・グッドマンがあります
5番街を挟んで向かい側にはプラザホテル。両隣にはカルティエと高級百貨店バーグドルフ・グッドマンがあります

 ニューヨークのメディアの報道によると、03年、米不動産王のハリー・マックロー氏が、ゼネラルモーターズ・ビルディング(GMビル)を14億ドル(約1684億5500万円)の借入資金で購入。同氏はこの時、今のアップルストアがある場所、つまり5番街に面した、だだっ広いだけで役に立たないスペースをどうするか悩んだそうです。当時、急成長を遂げていたジョブズ氏率いるアップルに注目したマックロー氏が、ジョブズ氏との話し合いに漕ぎ着けると、2人はすぐに意気投合。アップル側は、すべての面でパイオニア的な存在となる旗艦店のオープンに意欲的で、この時すでに、24時間営業を視野に入れていたそうです。

 GMビル前の広場のど真ん中に巨大なガラスキューブを置くというのは、ジョブズ氏の発案。当時、ジョブズ氏、マックロー氏、デザイナーたちの間で交わされたキューブのデザインは、現在のキューブの感じとはかなり違っていたらしいですが、最終的に今のデザインで合意。さらに市の都市計画委員会の許可を得なければならず、ジョブズ氏もイライラと気をもむ日々だったようです。

ガラスのらせん階段と、360度ガラス張りの円形エレベーターで地階にあるショップへ
ガラスのらせん階段と、360度ガラス張りの円形エレベーターで地階にあるショップへ

 そしてついに、06年5月にオープン。アップルは当時、この店が年間どのぐらい儲かるのか知らなかったようで、1年目は1日100万ドル(約1億2000万円)ほどの売り上げだったそうです。期待していたより少なかったらしいのですが、それでも、1年目にして週5万人が店を訪れるという快挙に、GMビルの価値と名声は劇的に高まりました。ジョブズ氏とマックロー氏のビジョンは、見事に大当たりしたわけです。

 年間家賃が世界一高いことで知られる5番街ですが、同店の単位面積当たりの売り上げは、ティファニーなど数ある世界の高級ブランド店を抜いてトップ。もちろん、世界中にあるアップルストアの中でも、高い収益を誇る店舗のひとつとなっています。11年には、ガラスキューブのガラスの継ぎ目をなくすため、670万ドル(約8億800万円)をかけた改修工事も行われていますが、今年、再びリノベーションが行われる見込み。GMビルは「アップルビル」とも呼ばれるようになり、天国のジョブズ氏もさぞかし、喜んでいることでしょう。(ニューヨークから鹿目直子。写真も)

ワンフロアでかなり広い店内。24時間営業で、いつも賑わっています
ワンフロアでかなり広い店内。24時間営業で、いつも賑わっています