北海道新幹線の新青森~新函館北斗が開業して3年半。起点の新青森をのぞくと新たに新幹線駅となったのは3駅だが、うち2つは駅名も新たに生まれ変わっている。今夏、初めて北海道新幹線に乗車したが、いずれも新幹線開業前に訪れた駅ばかり。当時のおもかげを探しながらの旅を2回に分けてお届けします。



奥津軽いまべつ駅のホームに降り立つと、あまりの違いにキョロキョロしてしまった〈1〉。ここは青森県。しかしJR北海道の駅である。青函トンネルが開通し、本州と北海道を結ぶ海峡線ができた際、津軽線から分岐する海峡線はJR北海道の路線とされ、この地に「津軽今別駅」が設置された。ただそれだけなら津軽今別駅が奥津軽いまべつ駅に生まれ変わっただけの話なのだが、津軽今別はクイズ番組にも登場する駅だったのだ。


〈1〉奥津軽いまべつ駅。新幹線駅として立派な駅舎となった
〈1〉奥津軽いまべつ駅。新幹線駅として立派な駅舎となった

実は津軽今別と隣接して津軽線の「津軽二股駅」があるのだが、こちらはJR東日本、さらに言うと乗換駅にもされなかったため、両駅を鉄道で行くには1度青森まで出るという旅程が求められる。またともに停車本数が少なかった(海峡線は特急列車のみの運行で津軽今別は1日2往復しか止まらなかった)ため、とんでもなく時間がかかるので「徒歩だと3分、鉄道利用だと数時間」なんていう番組が成立した。


〈2〉津軽今別時代のホーム
〈2〉津軽今別時代のホーム
〈3〉津軽今別の駅名標。間もなくなくなるからだろうか、文字も薄くなったままだった。隣駅は青函トンネルの中にある竜飛海底だった
〈3〉津軽今別の駅名標。間もなくなくなるからだろうか、文字も薄くなったままだった。隣駅は青函トンネルの中にある竜飛海底だった
〈4〉津軽今別には1日2往復しか列車は停車しなかった
〈4〉津軽今別には1日2往復しか列車は停車しなかった

私が津軽今別を訪れたのは2013年のこと〈2〉〈3〉〈4〉。その2本しか停車しない電車に函館から乗り込んだ。既に新幹線の工事は始まっていたが、確かに両駅は近い。階段を下りたところが、すぐ津軽二股である〈5〉〈6〉〈7〉。この時は蟹田を経て青森に向かったため、津軽二股で1時間ほど待った。見渡すところ周囲に何もない。何もないが道の駅が併設されていた。休憩も食事もできる。それが今回、大いに役に立った。


〈5〉階段を降りると津軽二股駅だった。隣接する道の駅が見える
〈5〉階段を降りると津軽二股駅だった。隣接する道の駅が見える
〈6〉津軽二股のホームから。津軽今別とは、まさにお隣さんだった
〈6〉津軽二股のホームから。津軽今別とは、まさにお隣さんだった
〈7〉現在の姿。奥津軽いまべつ駅には奥に見える跨線橋を利用する。かつての屋根付き階段の跡は、おもかげを残すものの自然にかえっている
〈7〉現在の姿。奥津軽いまべつ駅には奥に見える跨線橋を利用する。かつての屋根付き階段の跡は、おもかげを残すものの自然にかえっている

そして現在。津軽今別時代は小屋の待合室がホームにあるだけだったが、今は新幹線の駅である。立派な駅舎ができ、もちろん駅員さんもいてみどりの窓口もある〈8〉。駅舎と外の出入りはエレベーターで。階段もあるが、これは全くおすすめできないし、エレベーターを促す表示もある(笑い)〈9〉。


〈8〉新幹線駅となった奥津軽いまべつのホーム
〈8〉新幹線駅となった奥津軽いまべつのホーム
〈9〉うっかり階段を使おうとする利用客へのアドバイス(?)。ちなみに日本で一番高い駅だった三江線宇都井駅の階段は116段だった
〈9〉うっかり階段を使おうとする利用客へのアドバイス(?)。ちなみに日本で一番高い駅だった三江線宇都井駅の階段は116段だった

ただし立派な駅舎ができた分、2つの駅の距離はやや遠くなった。といっても徒歩3分が7、8分になっただけだけど。寒冷地だけに津軽今別と津軽二股も階段はシェルターで覆われていたが、現在もずっと屋根があるところを歩けるようになっている。今回私は時刻表を読み間違えてしまい、2時間も待たされることになってしまったが、道の駅があるという知識が大いに役立って食事にも困らず、また奥津軽いまべつにはエアコン完備でwifiもある待合室があるため全く苦にならなかった〈10〉。


〈10〉周囲には何も見当たらず駅に隣接する道の駅の存在は心強い
〈10〉周囲には何も見当たらず駅に隣接する道の駅の存在は心強い

2時間後の列車で津軽線の終点、三厩(みんまや)駅へ向かった。ようやくかなった初訪問〈11〉〈12〉〈13〉。私の大好きな終着駅の空気を味わうことなく、すぐの折り返しとなってしまったが、本当はここから先が津軽半島の見どころ。有名な階段国道や津軽鉄道の津軽中里駅へ向かうバスも奥津軽いまべつから出ており、計画的に回れば各地を満喫できそうだ。本数は少なくても新幹線駅は観光拠点にもなれる。


〈11〉津軽線の終点である三厩駅のホーム
〈11〉津軽線の終点である三厩駅のホーム
〈12〉三厩は今年6月から無人駅となった
〈12〉三厩は今年6月から無人駅となった
〈13〉年季の入ったサボ
〈13〉年季の入ったサボ

三厩から再び奥津軽いまべつへ。実は今も津軽二股とは乗換駅としては扱われておらず、通しの切符を買うことはできない(青春18きっぷの新幹線オプション券利用の場合はもちろん乗換駅となる)。今別時代の1日2往復から現在は7往復と、かなり便利になった。階段のあった場所が、わずか数年ですっかり自然に戻っていることに少し寂しさを覚えながらもオプション券(※)を手に北海道に向かった〈写真14〉。【高木茂久】


〈14〉現在の津軽二股駅
〈14〉現在の津軽二股駅

※青春18きっぷ北海道新幹線オプション券 新幹線ができて在来線で北海道と本州を結ぶ路線がなくなったためにできた企画切符。2300円のオプション券を購入することで奥津軽いまべつ~木古内を新幹線で、木古内~五稜郭を道南いさりび鉄道でそれぞれ利用できる。青春18きっぷとの併用が条件で、道南いさりび鉄道の駅では途中下車できない。