自分の名字や名前と同じものを町で見かけると愛着がわきませんか? 他の方の家の表札や看板、もっと言うと地名も。地名につながるものといえば駅名。ただ多い名字だからといって駅名も多いかというと全く違う。私的なことではあるが現役の「高木駅」は日本にひとつしかないようだ。広島県にある福塩線の高木駅。ただたったひとつの駅ならば、これは行くしかないでしょう、と現地に足を運びました。最後には読者プレゼントもあります。

 
 

名字に限っていうと日本で多いのは佐藤、鈴木、高橋、田中あたりになるようだが、調べてみたところ佐藤駅、鈴木駅はないようだ。京急に鈴木町駅はあるが、今回は完全な「同姓」にこだわってみたい。高橋駅は佐賀県の佐世保線に存在し、田中駅は長野県のしなの鉄道にある。伊藤駅もない。伊豆急行は伊東駅である。ちなみに弊社の最寄り駅として渡辺橋(京阪中之島線)はあるが残念、渡辺駅はない…と探し始めるとキリがないし、人名と地名の関係は私にはさっぱり分からないのでこのぐらいにしておくが、とにかく高木駅を目指そう。駅名標を前に自撮りもするゾ。

〈1〉大変便利な吉備之国くまなくおでかけパス
〈1〉大変便利な吉備之国くまなくおでかけパス

訪れたのは昨年12月。最後の宇高航路に乗車した翌日だ。前日に購入しておいた「吉備之国くまなくおでかけパス」(※)を利用するためだ。岡山県のほぼ全域と広島県の一部のJRに井原鉄道、岡山電気軌道、水島臨海鉄道が1日乗り放題で2020円というコスパ抜群の切符(写真〈1〉)。福塩線へは井原鉄道経由で。開業して20年の「若い」鉄路。なかなか魅力的な路線で、あらためて紹介したい。井原駅(写真〈2〉)で途中下車しながら福塩線との接続駅である神辺駅に到着した(写真〈3〉)。


〈2〉井原鉄道の中心駅、井原駅
〈2〉井原鉄道の中心駅、井原駅
〈3〉福塩線と井原鉄道の接続駅である神辺駅。直通列車もある
〈3〉福塩線と井原鉄道の接続駅である神辺駅。直通列車もある

福塩線は山陽本線の福山から芸備線の塩町の約80キロを結ぶ。福山から府中までは大正時代に開業し、早々に電化された歴史ある路線で福塩南線と言われる。府中以北も戦前に全線開業しているが、こちらは非電化。福塩北線と呼ばれる。南線と北線を直通する列車はなく、必ず府中での乗り換えが必要。ダイヤについては南線は1時間に1本以上が確保されているのに対し、北線は1日にわずか6往復。途中、7時間近く運行がない時間もあり、ローカル線情緒をたっぷり味わえる。ちなみに塩町止まりの列車はなく、すべて芸備線に乗り入れて三次まで運行される。

高木駅は南線に所属している。神辺からは20分ちょっと。過去に何度か福塩線に乗車したことがあり、駅の存在は認識していたが、降りるのは初めてなので手前あたりからドキドキする。そして到着(写真〈4〉〈5〉〈6〉〈7〉)。

〈4〉高木駅は1面1線の棒状駅
〈4〉高木駅は1面1線の棒状駅
〈5〉ホームにはスロープを登る
〈5〉ホームにはスロープを登る

駅舎もない待合所だけの1面1線の棒状駅だが、自分の名前が入った駅名標を見ると豪華な駅のように感じるから不思議だ。ここは府中市で駅の周囲は住宅街。次の電車まで1時間。とにかく写真を撮りまくる。

人生初めての自撮りにチャレンジしたが、なかなか難しい。テレビで見ると簡単そうにやっているが、そうでないことを痛感。駅の構造上、踏切を通る人からも丸見えだ。中腰になったり、立ち上がったり…道行く人がけげんそうに見ている。きっと怪しい人と思われたに違いない(笑い)。電車の時間が近づいてホームに人が集まってきた。あっという間の1時間だった。

〈6〉駅舎はなく待合所に券売機が設置されている
〈6〉駅舎はなく待合所に券売機が設置されている
〈7〉高木駅の駅名標
〈7〉高木駅の駅名標

その後は南線の駅をいくつか回った。関西人が読むと「駅を発見した」と叫ぶことになってしまう「駅家駅」(写真〈8〉〈9〉)。

〈8〉駅家駅の駅舎
〈8〉駅家駅の駅舎
〈9〉駅家の駅名標
〈9〉駅家の駅名標

これは何という字体だろうか、駅舎の文字に味わいがある「新市駅」(写真〈10〉〈11〉)。歴史を持つだけに北線も含めて紹介したい、訪問したい駅はいくつもあるが、今回はここまで。とても紹介できるものではなかったので(一番の問題は被写体か)自撮りの腕を上げてから来ることにしよう。【高木茂久】

〈10〉新市駅の駅舎
〈10〉新市駅の駅舎
〈11〉大正時代に建てられた新市駅の文字は歴史を感じさせる
〈11〉大正時代に建てられた新市駅の文字は歴史を感じさせる

※前日までに岡山、福山エリアのみどりの券売機で購入することが必要。エリア外からはe5489で予約できる。窓口での発売はないが、e5489予約の場合はみどりの窓口で受け取れる。他の特典など詳しくはJR西日本のホームページで。

◆プレゼント 中国地方のローカル線を中心に取材するフリーライターやまもとのりこさんの「ローカル線で行こう! 鉄旅ガイドブック」(写真)を読者3人にプレゼントします。今回紹介した福塩線や井原鉄道のほか、芸備線、木次線に廃線となった三江線まで、沿線の見どころや駅の情報、ローカル線の旅では貴重な飲食店情報も網羅されています。希望者ははがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記の上、〒530・8334(住所不要)日刊スポーツ報道部「鉄旅ガイド」係まで。1月15日必着。当選者の発表は発送にかえます。

「ローカル線で行こう 鉄旅ガイド」
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