赤穂線の後編は、ちょっと「食」にこだわってみた。今回、赤穂線に乗った最大の目的は「カキオコ」。カタカナ4文字だけを聞いても何のことやら分からない方もいらっしゃるかもしれないが、まずは本文をお読みください。また戦後間もなく誕生した赤穂線には「ザ・国鉄」の駅舎が多く、今もそのまま残っていて見るだけで楽しい。「カキオコ」と「国鉄駅舎」「廃線」の旅です。(訪問は3月上旬。以前撮影した写真も含まれています)


時計の針を朝に戻してみる。姫路駅到着は午前8時。すぐに乗り継ぎはせず、こちらに(写真1)。

姫路名物の「えきそば」である(「駅そば」ではありません。「えきそば」です)。

〈1〉店舗が旧国鉄の急行車両となった姫路駅ホーム2えきそば
〈1〉店舗が旧国鉄の急行車両となった姫路駅ホーム2えきそば

和風だし+中華麺。戦後間もなくからの試行錯誤を経て70年近く姫路駅の名物として愛されてきた。昨夏ホームの店舗がリニューアルされて国鉄気動車急行車両(キハ58)に。実に目を引く。キハ58になってからは初めていただいた(写真2)。うーん、この味だ。冷える日だったので体が温まる。

〈2〉和風だしに中華麺の姫路駅名物
〈2〉和風だしに中華麺の姫路駅名物

再び時系列に戻る。播州赤穂以西は1時間に1本しか運行がないので効率を上げるため行って戻ってを繰り返す。目指したのは備前片上。今でも始発終着設定が一部残っているが、かつては運行の重要駅で大阪からの直通もあり、貨物も扱っていた。今は静かな時が流れ、広い構内にかつての面影を残すだけだが、これぞ国鉄というコンクリート駅舎も往時をしのばせる(写真3、4)。

〈3〉住宅のようなコンクリート駅舎が残る備前片上駅
〈3〉住宅のようなコンクリート駅舎が残る備前片上駅
〈4〉備前片上駅は広い構内を持つ
〈4〉備前片上駅は広い構内を持つ

国鉄の古い駅舎=木造駅舎のイメージを持たれている方も多いと思うが、戦後の国鉄全盛期に設置された駅は武骨なコンクリート駅舎が主流だ。備前片上は立派な住居構造で目を引くのは駅舎に掲げられた文字。字体のことは分からないが実に印象に残る(写真5、6)。今回は行けなかったが、東隣の伊里駅も同じ字体を使用している。

〈5〉特徴的な文字の備前片上駅
〈5〉特徴的な文字の備前片上駅
〈6〉備前片上駅の現在の改札口
〈6〉備前片上駅の現在の改札口

ちなみに片上の町の中心部に近いのは西隣の西片上。ここから数分歩くと旧片上鉄道の片上駅跡。県内の鉱山から片上港へ運搬する目的で敷設され、乗客も運んでいたが平成に入って間もなく廃線となった。今は駅跡が残る(写真7)。

〈7〉片上鉄道の片上駅跡(昨年9月)
〈7〉片上鉄道の片上駅跡(昨年9月)

さぁ、播州赤穂方面に逆戻り。ここからが待ちに待った時間である。時間的にも午後1時になろうとしているので、おなかに何か入れないと。ということで日生で下車(写真8、9)。

〈8〉日生駅も国鉄らしいコンクリート駅舎を持つ
〈8〉日生駅も国鉄らしいコンクリート駅舎を持つ
〈9〉日生駅を降りるとすぐ海が広がる
〈9〉日生駅を降りるとすぐ海が広がる

難読駅で「ひなせ」と読む。赤穂線の中では播州赤穂と並んで観光拠点となる駅でホテルや旅館、飲食店も多い。駅を降りるとすぐ港が広がる。小豆島へのフェリーや日生諸島への定期船も出ていて、20代のころ、島の民宿で一生分食べたのではないかというほど魚をいただいた記憶がある。

しかし今回の目的は魚ではなく「カキオコ」である。初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれないが、要は「カキ入りのお好み焼き」である。これがメチャうまい(写真10)。

〈10〉カキオコとビール。絶妙に合う
〈10〉カキオコとビール。絶妙に合う

私自身、こちらに来たのは2年半ぶり。日生が発祥のカキオコは最近人気が高まり、兵庫県まで広がっていて昨年暮れにも相生で食べた。ただそれは駅から離れた場所で移動手段は車。私の知る限り、駅から町の中心部に歩いていく間に、どこに入るか迷ってしまうほどお店があるのは日生だけだ。そして電車で行くと大変良いことが待っている。

私の記事やツイッターをご覧になっている方は、いつも出かけるたびに真っ昼間から飲んでいるのか、と思われる方も多いかもしれないが、ハイ、その通り。昼から一杯というのは鉄道旅の特権である。実は2年半前は10月末で、ギリギリでカキのシーズンではなく冷凍のカキだったのだ。今回はカキの季節に間に合った。大変満足いたしました。

その後、赤穂線の戸籍上の終点である東岡山に到達した(写真11)。

〈11〉赤穂線の終点である東岡山駅。相生で分かれた山陽本線と再び合流する
〈11〉赤穂線の終点である東岡山駅。相生で分かれた山陽本線と再び合流する

新幹線の高架に寄り添っていて、新大阪方面から乗ると減速が始まっているので車窓から見る機会の多い駅だ。前回も記したが、赤穂線(というか岡山支社全般)には国鉄時代からの車両が多く残っていて、私的には、かつてマリンライナーとして瀬戸大橋を渡っていた213系を見るたびに20年以上前の高松勤務時代を思い出す、そんな楽しみもある(写真12)。

〈12〉今はローカル輸送に入っている213系は、かつて岡山~高松の快速マリンライナーとして活躍した
〈12〉今はローカル輸送に入っている213系は、かつて岡山~高松の快速マリンライナーとして活躍した

旅をおすすめする現状ではないが、カキの季節は今年の晩秋にまたやって来る。そのころ再びカキオコ&ビールといきたいと強く思う。【高木茂久】