朝日のまぶしさを浴びながら、高台にいる私たちの視線は眼下の越前大野城に注がれていた。2015年12月31日、朝7時半。「おっ、来た来た!」と誰かが興奮を発し、誰もが息を呑んだ。

越前大野城の高台が雲で覆われ始めた
越前大野城の高台が雲で覆われ始めた

 「うわー!」「すげー…」。興奮、感嘆、沈黙の繰り返し。前日の雨で湿度が高まった上で、低温で放射冷却が起きることが、まとまった雲の発生条件。その雲が次々と南側から押し寄せ、高台の上にそびえる越前大野城を包み込んでいく。同時に、城のふもとにある大野市街地が雲で見えなくなる。背後にそびえるのは白山山系だろうか。

城の背後の山々も神々しさを演出
城の背後の山々も神々しさを演出

 雲が流れ始めてから6分後、福井が全国に誇る「天空の城」はほぼ完成に至った。雲海に浮かぶ、悠久の城。見事な絶景である。1分後には霧散しているかもしれないこの絶景に、誰もが無言でシャッターを押し続け、肉眼にもしっかり焼き付ける。

「天空の城」と化した越前大野城
「天空の城」と化した越前大野城

 雲海が街を多い、完全に「天空の城」状態になる確率はかなり低い。大野市役所の「地域おこし協力隊」として3シーズン、ほぼ毎日この展望スポットを訪れた清水孝啓さんに「天空の城」発生確率を尋ねた。4シーズン分の統計を教えてくれた。発生確率が高いのは9月末~4月末の約7カ月、約210日間。14年冬の発生回数は12回。15年冬は13回、16年冬は14回、17年冬は13回だったという。

 計算すると、ハイシーズンであっても「天空の城」の発生確率は約6%。私は大みそかにたまたま来て、その6%に巡り合ったのだった。これを奇跡と呼ばずして何と呼ぼうか。2015年、私はそんなにいいことをしていたのだろうか。それとも最後にどさっと幸運がやって来たのか。

煙突の煙で背後に「け」が現れた
煙突の煙で背後に「け」が現れた

 地元の方々であろうか、常連らしい2組の親子連れがやって来た。朝の散歩代わりに訪れる人もいるようだ。子どもたちはどうも、天空の城の背後にある、煙突の煙と雲で作られた「け」が気になって仕方ないらしい。「あそこに“け”がある。“あそこのけ”や!」などと早朝から実にしょうもない下ネタを連呼披露し、カメラに夢中だった大人たちが皆、今度は笑いに包まれる。福井の明るさに触れ、幸せな朝を過ごす。

 「天空の城」が完全体になったわずか3分後、雲海のピークは過ぎ、雲が城からほどけていった。眼下には大野市街地がはっきり見える。発生確率6%かつ、わずか10分間の雲海ショー。いつかまた見てみたい。でも、そんなに幸運続きでも怖い。80年の人生でたった一度でも目撃できたことを、幸せに思いたい。【金子真仁】

「天空の城」はわずか10分で終わった
「天空の城」はわずか10分で終わった

Wonderful View No.83 “Megane bridge of Mikuniminato station”

There are several sightseeing spots called "the castle of the heavens" in Japan.

The Echizen Ohno castle of Fukui is called "the castle of the heavens", too. Because a sea of clouds is made around a castle in winter cool morning, We call the castle of the heavens. Encounter probability is approximately 6% low.


[DATA]

Parking Address: 7-43, Kuwakake, Ohno-shi, Fukui-ken

Access: About an hour by drive from Fukui city area

Parking: For about 500 cars