7月11日、朝4時49分に撮った。手をつなぎ、円を描き、眼を閉じる。南埼玉大会初戦を前に、浦和学院ナインは気持ちを1つにした。食堂には「わがまま集団を変えろ」の紙が貼られている。練習場のホワイトボードには「敵は我にあり」と書かれている。ウラガクはここから、甲子園ベスト8まで上り詰めた。


浦和学院の2018年夏は早朝の黙想から始まった
浦和学院の2018年夏は早朝の黙想から始まった

少しさかのぼって7月8日、午後3時16分に撮った。少子化に伴い、野球部員9人の確保が難しい高校も増えつつある。埼玉県立越生高校もその1つ。でも、近隣には人数不足の高校はなく、合同チームも組めない。そこで「単独廃校ルール」、いわゆる助っ人制度を申請。近隣の武蔵越生高校から4人を臨時派遣してもらい、最後の夏に挑んだ。初戦で敗れたが、3年生の意地は見せた。笑って終われた。


「汗くせぇ!」と笑いながら、この夏だけのチームは解散した
「汗くせぇ!」と笑いながら、この夏だけのチームは解散した

7月13日、午後2時58分に撮った。「全国一のマンモス公立校」埼玉・伊奈学園総合高校の3年生は仲良しだ。いつもお世話になっている女子マネジャーに恩返ししようと、男子18人、部室にこもって作戦会議。部活後の買い食いを我慢し、お金をため、ピンク色のグラブを特注した。6月21日の夕方、全員で女子マネを呼び出した。「せーの、ありがとう!」とサプライズでグラブを渡した。SNSに動画をアップしたら、12万人から「いいね!」が届いた。


ピンクのグラブの思い出はいつまでも色あせない
ピンクのグラブの思い出はいつまでも色あせない

7月24日、午後3時51分に撮った。北埼玉大会で花咲徳栄高校が優勝。学校へ戻ると、キャプテンの背番号の右下がちょっと赤い。主砲・野村君(現日本ハム)の太ももも赤い。聞くと優勝の瞬間、マウンドに駆け寄った一塁手が勢い余って、味方捕手のキャッチャーマスクに激突。鼻血が出て、飛び散ったという。全国制覇をしたチームの、後輩たち。強烈な重圧下で甲子園を決め、喜びもひとしおだった。


優勝のもみ合いの勢いで背番号の刺しゅうも外れている
優勝のもみ合いの勢いで背番号の刺しゅうも外れている

7月29日、午後0時32分に撮った。南神奈川大会決勝、横浜高校の主砲・万波君(現日本ハム)が満員の横浜スタジアムで、あわや場外に飛び出しそうな特大ホームランをかっ飛ばした。ネット裏最上段の記者席からダッシュで現場へ駆けつける。この撮影現場の1メートル上の看板に当てた。すごい飛距離だ。もし打球があと2メートル高かったら、場外ホームランだった。その場合、球場横の交差点に球が転がっていた可能性が高い。


ここまで飛ばす高校生がいるとは…驚かされる
ここまで飛ばす高校生がいるとは…驚かされる

高校野球100回の夏、取材班に臨時参戦しました。この夏だけでも、たくさんのドラマがありました。胸を打つ青春の光景は「心の絶景」とも言えます。人事異動で、年明け1月から高校野球を中心としたアマチュア野球担当記者に就くことになりました。今度は絶景ではなく、白球のドラマを追うため、全国を飛び回ります。


旅をしすぎました。試しに調べてみると、全国4000校弱の高野連加盟校のうち、約7割の高校の3キロ圏内に行ったことがあります。全国各地で感じた「風土」も、取材や記事に生かせればなと思います。野球の取材活動に専念するため、この「47都道府県を撮る」の定期更新も今回で終了します。取材の中で、いい景色に巡り合ったら、また不定期で更新することがあるかもしれません。


ひとまずは、ご愛読ありがとうございました。良いお年をお迎えください。【金子真仁】


雲はわき、光あふれて。
雲はわき、光あふれて。