対馬到着。宿にチェックインを済ませ、さぁ夕食だ。しかし、夜も運が悪かった。閑散期だからか、狙っていた数店が全て臨時休業。もうこうなったら部屋でゆっくりしよう。島唯一のコンビニか、モスバーガーか。長い1日だった。モスシェイクが染みた。


さて2日目。北側の島へ向かう。厳原市街地から対馬空港エリアを抜けると、やがて狭い海峡がある。赤い万関橋の上から、海峡をゆく船を眺める。この海峡、明治34年に旧日本海軍が艦船を通すために掘削した人口の水道だそうだ。日露戦争の出撃でもこの万関瀬戸が使われたそうで、ちょっと身震いする思いになる。


万関橋がつなぐ海峡を船が通り過ぎる
万関橋がつなぐ海峡を船が通り過ぎる

再び北へ。午後から雨予報。降らないうちに、有名な烏帽子岳展望所へ行こうかと思いつつ、空はまだ大丈夫そうなので、ちょっとだけ寄り道。小船越地区にある「西漕手(にしのこいで)」。国道沿いに駐車スペースがあり、気軽に立ち寄れるのがいい。サッと見てサッと次へ行こうと思って、100メートルほど歩いたら、とんでもないものが目に飛び込んできた。


右は山道、左には奇跡の景色が
右は山道、左には奇跡の景色が

右は山道。左は…何、あの色? ヤバくない? 心の中で自分に冷静に突っ込み、冷静に進む。進みながら、ここがほぼ確実に「対馬イチ」であることを悟る。水のほとりまでくると、もう息をのむほどの素晴らしさだった。


光の加減でとんでもない色に映える
光の加減でとんでもない色に映える

ちょうど紅葉も見頃の時期で、乳白色がかったブルーにとても合う。もっと性能の良いカメラで撮ったら、水面の紅葉が見事なリフレクションになっていたことだろう。


紅葉真っ盛り、リフレクションも美しい
紅葉真っ盛り、リフレクションも美しい

日本一、なんて大げさなことは言わない。でも紅葉の時期はどこへ行っても人、人、人。


比べてここは、誰1人いない静寂の地。無人の小舟が2つ、浮かぶだけ。山形県の丸池以来、久しぶりに「神」を感じる場所だった。


「西漕手」から遣唐使たちは旅立った
「西漕手」から遣唐使たちは旅立った

実はこの西漕手にも歴史があり、7世紀から9世紀にかけ、本土から来た遣唐使たちがこの入り江で船を乗り換え、彼の地へ向かっていったのだという。白村江の戦いといい、遣唐使といい、歴史教科書をなぞれる奥深さがこの島にはある。


浅茅湾を眺める烏帽子岳展望所は確かにきれいだったけれど、神聖な西漕手を見てしまった後では、さほど感じるものがなかった。こんなにいい場所が、全国的には全くといっていいほど知られていない。足を運べば、日本もまだいろいろあるんだなとあらためて実感させられた。【金子真仁】


烏帽子岳展望所から眺める浅茅湾
烏帽子岳展望所から眺める浅茅湾