今年もアユ釣りが解禁となった。新型コロナウイルスの影響で、静岡県内では5月20日に解禁を予定していた狩野川が同30日、興津川が6月1日に遅らせた。関東地区では6月1日に山梨・桂川、栃木・那珂川、茨城・久慈川などが、コロナ対策も万全にして予定通りスタートさせた。先に始まった狩野川では遡上(そじょう)が多く、場所によっては入れ掛かりも見られた。アカ付きも良好で多くのファンを喜ばせていた。

狩野川では、コロナ対策を施して10日遅れの解禁にこぎつけた。オトリアユ販売店「旭水園」は、スタッフと釣り客の間を透明シートなどで仕切っていた。それをテントの前に張って現金のやりとりをする。オトリアユを渡すときも、アユを入れた小さなオケをシートの下から出して釣り客に受け取ってもらった。

コンビニのレジなどを参考にした同川漁協の組合員が、流域でオトリアユや釣り券を扱う店舗に出向いて指導したという。釣り客との社会的距離を保つためだ。ホームページでも、「密」の状態を避け、マスクの着用や手指の衛生を呼び掛けるなどした。

異例の解禁ながら、初日から約700人(狩野川漁協調べ)のファンが足を運んだ。日の出とともに思い思いの場所に入った。

開始当初は冷たい西風が時折強く、川上から川下へと吹き抜けて肌寒かった。日の出とともに気温も上昇。朝7時すぎには太陽が降り注いで暑くなり、日当たりのいい場所でアユの追いも活発になる。サオ先が絞り込まれ、タモに次々と取り込まれていった。

雲金地区の旭水園前で約2時間楽しんでいた60代の男性は、12~18センチのアユを12匹(オトリアユ2匹を含む)釣り上げた。「数は薄いが、昨年よりも型がそろっている」と話した。

旭水園前よりやや下流にある人気ポイント、「吊(つ)り橋」の上流部に陣取った50代男性は、「30年以上の狩野川の解禁日には来ているが、十数年ぶりに面白い釣りができた」と笑う。朝4時30分から6時間あまりで10~20センチを35匹。オトリをいい場所に泳がせれば、5~6匹連続して掛かった。「水中に小さいアユの群れが固まっているのが見えた。これがどんどん成長して散らばり、縄張りを持てばもっと期待できる」と満足そうだった。

4月までは安定しない天候が続いた伊豆地方だったが、5月の半ば過ぎから夏を思わせる日が多くなった。同時に遡上も多く見られるようになった。

狩野川は、昨秋の台風の通過で川底に堆積していた土砂が押し流され、上流部から大きな石が転がってきたという。この大石にアユのエサとなるアカが付いた。従来あった石にもアカが付いて黒光りするなど、いい状態で解禁を迎えることができた。石に付着する緑色の藻「アオノロ」も見られるが、こちらはまとまった雨で流されれば、川の状態はより良くなるはず。ジリジリと照り付けるような盛夏になれば、トップシーズンを迎える。

【興津川】コロナ対策で、5月20日の解禁を6月1日まで遅らせた。水温は17度と例年より1~2度低く、小雨、20センチ減水とハードルは高かった。場所も丸淵~立花橋などに限定されたが、群れを見つけた人は確実に釣り上げた。12~18センチが15~35匹と、釣果もまずまず。遡上は例年通りで、アカ付きも良く、目視も可能。「まとまった雨が降って濁りが入ってもいい。水位が動けば、川の状態はさらによくなる。気温が上がれば、楽しみが増える」。地元の常連、横山愛治さんはこう話していた。

◆あこがれ亭【電話】054・393・3814。オトリアユ1匹600円。

【桂川】約2000人が訪れた。人気の猿橋公園前では、午前中だけで68匹も掛けた人がいた。サイズは15~18センチ。同川漁協によると、平水で濁りもなし。朝は寒かったが、徐々に追い始めたという。日刊釣りペンクラブの相吉孝顕会員は「桂川では10トン放流する。このうち7割は、追いがいいことで人気の琵琶湖産。初日から絶えず誰かが掛けていた。期待通りで、これからも楽しめる」と話していた。

◆桂川漁協【電話】0554・63・0083。オトリアユ1匹600円。

【久慈川】20センチ超の良型が目立った。現場を訪れた日刊釣りペンクラブの大関実会員は「浅場、深場に関係なく、流れの強い場所に分があった」と言う。解禁初日は曇りまたは雨で冷え込み、追いが良くなかったが、袋田地区の菜洗や南田気橋上下流など、ポイントさえつかめば確実に掛かった。「全体に型がそろっていた。これで太陽が照れば、もっと良くなる」(大関会員)。

◆菊池商店【電話】0295・72・3037。オトリアユ1匹400円、3匹1000円。

【那珂川】解禁初日としては上々の釣果があった。10~21センチが10~33匹。町裏、小船渡、日暮といったポイントを主体に1000人ほどが訪れた。水量が豊富な場所を中心に分があり、獲物の追いもまずまずだった。もともと、今年は早い段階から遡上が見られ、「昨年の10倍。数的には申し分ない」と、漁協関係者などから言われるほど魚影も濃かった。前評判通りだった。水位は、20センチほど減水している。これが戻れば、さらに状態は上向きそうだ。

◆人見【電話】0287・54・0556。オトリアユ3匹1000円。