冬の人気ターゲット、ヒラメが面白い。茨城県では11月から部分解禁している鹿島地区に加え、12月からは全県で解禁となった。大洗「きよ丸」(飛田和弘船長=57)では、解禁初日から乗船した14人全員が本命を釣り上げた。数が楽しめるだけではなく、これから寒さが増せば、「常磐物」と呼ばれる大判もお目にかかることができる。

ヒラメはあちこちでちょっかいを出してきた。エサの生きイワシをつついたりかじったりして、サオ先を小刻みに揺らす。この「前アタリ」をじっと待って、心の中で40数え、食い込むまで我慢する。通称「ヒラメ40」。食べて針掛かりすれば「本アタリ」で、サオ先がグィーンと海中に絞り込まれた。ソフトにサオをあおって合わせ、底から引き上げる。目指す寒ビラメは、タモに取り込まれた。

船中の解禁第1号は、右舷ミヨシ(最前方)の石浜寿一さん(58=宇都宮市)。2年前の2月に「きよ丸」で5キロを釣り上げた実績がある。「落としていきなり食った。今季最初に釣れたなんて、気分がいいですね」と笑った。午前6時20分ごろに第1波、8時半ごろに第2波と、「チャンスタイム」が訪れた。

石浜さんの右隣、海老沼勇さん(46=栃木市)は合計7匹でサオ頭。「ポイントを移動して最初の流しで掛けられるよう、オモリを底に着けたら1メートルほど巻き上げ、食い気のあるヒラメを食わせるようにした」と、釣法を伝授してくれた。

茨城県魚でもあるヒラメ、実は「ヒラメ40」のセオリー通りに釣ろうとしても、3分も5分も前アタリがあったまま待ちぼうけを食らわせた末、すっぽ抜けする。かと思うと、石浜さんの1匹目のような「カウンターパンチ」をお見舞いする。時にはハリスをぶち切って逃げる。とんだ「食わせ物」でもある。

アタリと食い込みに備え、誰もがサオを手持ちにして細心の注意を払う。テンヤマダイを2年ほどやっているという、右舷トモ(最後方)から3番手の粕谷雄稀さん(26=栃木県真岡市)は小さなアタリにいつ合わせていいのか苦戦しつつ、4匹を確保した。「父がやっていたヒラメ用のサオを借りてきた。また、釣りたい」と顔をほころばせた。

ヒラメ釣りがしたくて初めて船に乗ったという右トモ2番目の上村志乃武さん(47=水戸市)は、2キロ級をはじめ6匹ゲットした。「最大の2匹目は、急に重くなり根掛かりかと思ったら、リールが巻き上げられた。こんな大きいとは思わなかった。はまりそう」。

コロナの大流行ならお断りだが、ゴールデンタイムの第3波は10時半ごろやってきた。仕掛けを下ろせば誰かが食わせている。船中14人で、いつしかボウズ(0匹)はいなくなった。

この日最大の2・4キロを釣り上げた右トモの小橋三男さん(66=茨城県石岡市)は、「食い込み方の早い遅いはあるが、本アタリでしっかり合わせられれば釣れる」と話した。

小橋さんと「きよ丸」で知り合い仲良くなった大橋時男さん(65=同五霞町)と、伊東富雄さん(72=東京都清瀬市)はともにヒラメ歴30年以上。毎年といっていいほど、解禁日に乗っている。「全体に食いが浅く、小型が多い気がした。アタリが頻繁にあってみんな釣れたのなら、初日としては優秀」と声をそろえた。

この日は潮温が15・8度と、例年に比べて2~3度高めだった。「数的には3~7匹とまずまず。エサとなるイワシの群れを追ってヒラメが突っ込んできたら、大判を食わせるチャンスがある」と、飛田船長も期待している。【赤塚辰浩】

▼大洗「きよ丸」【電話】029・266・2779。集合5時。電話予約制。エサ・氷付き1万2500円。船内でカップラーメン用のお湯、お茶やコーヒーのサービスあり。