磯場での一発大型狙いのメジナ釣りが面白い。静岡・南伊豆の石廊崎「橋本屋」(山本一人店主=48)では40センチ前後の良型が食っている。乗っ込みにさしかかって抱卵しているか、すでに卵を産んで体力を回復させようと荒食いに向かうのか、個体によって状態は違う。潮の変わり目など、海の状況が少しでも変化した時がチャンス。数を伸ばすより、貴重な大物のアタリを逃さないようにタナ(魚の遊泳層)を探り当てて、自己ベストを目指そう。

春の訪れとともに、石廊崎のメジナが上向き始めた。突風が吹いたり気温が乱高下するなど陽気は落ち着かないが、適度に海が荒れて底が引っかき回されるのは好都合だ。「潮温が16~17度台で推移しているのもいい条件」(山本店主)。

大根、飛根、灯台下、下カツオなど、風の向きによって狙える場所が変わるが、潮上から潮下に流すとか、手前から沖への払い出しでエサを流す。あとはサラシ(岩場にぶつかって砕けた波が泡状になる場所のこと。酸素が豊富にあって魚が集まる)の中に落とし込む。

3年前「第37回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権」に初参加し4位に入賞、橋本屋に10年以上通う大澤雄一さん(48=東京都小金井市)は、「例年に比べ口太メジナは神経質で根に付いている。オナガメジナの良型は上がっている」と言う。実際、3月5日に大根で44・2センチを上げているほか、40センチ級を多数釣っている。

「釣れたオナガの腹を割いたら、コマセに使った配合エサの粒の小さい麦が多く、オキアミは1匹しか入っていなかった。底に近い方でじっとして、コマセが消えた後に残り粒をついばんでは消える。興奮すればスイッチが入るようだ」(大澤さん)。3月後半には、足元のドン深なポイントで、コマセの煙幕が消えた後の獲物の動きが目視できた。通常なら上に浮いてくるはずが、根から離れずにスッと出ては戻って横に移動するだけだったと確認した。

コマセにエサを同調させ、タナを探って合わせるタイプ。口太はピンポイントで狙う。オナガは活性が上がれば、食いが立って浮いてくると読んでいる。

また、橋本屋歴約15年の山木隆男さん(57=埼玉県入間市)は同じ3月5日、下カツオで40・3センチのオナガを仕留めている。足元にコマセを打ち、表層からタナを探って食わせた。「根に居着いている魚が多く、その食い気を誘うこと」と、型をみるためのアドバイスをくれた。

2人が共通して話していたのは、例年に比べて食いが立つ「チャンスタイム」が短いということだ。「良い年には、30~40センチのメジナが30~45分釣れ続ける。今年は15~20分くらいで終わる」(大澤さん)。潮の動き始めや、満潮、干潮の前後など、潮の変わり目の15~30分前からチャンスタイムは訪れる。「もしかすると、タイミングも場所もピンポイントで絞り込んだ方がいいかもしれません」(山木さん)。難しければ難しいほど、腕が試される。挑戦のしがいがあるというものだ。

▼石廊崎「橋本屋」【電話】0558・65・0108。5月14日までは午前4時30分集合、出船同5時。5月15日からは集合同4時、出船同4時30分。夜釣りも解禁となり、こちらの集合は午後2時30分、出船同3時。2人から受け付け。渡船5000円。