関東とその近辺の河川でトップを切って、静岡市を流れる興津川のアユ釣りが20日、解禁となった。朝5時のスタートから約1600人(興津川漁協調べ)が訪れた。場所によっては、開始早々から入れ掛かり。午前中で30匹、40匹も確保する人もいるなど、近年まれにみる大釣りを展開した。6月1日には主要河川でも解禁となり、本格的なアユ釣りシーズンを迎える。

「目印が吹っ飛んでいったよ」「0・6号のハリスがブチ切られた」。興津川の解禁初日は、居ついたアユの強烈な引きで開幕した。上流部の大網地区にかかるつり橋の上下流では、友釣りを楽しむ誰かのサオが絶えず絞り込まれた。流れの中心では、18~19センチの良型がオトリアユに猛アタックしてくる。予期せぬほど勢いのいいアタリに、釣り人の方がたまげてしまった。

橋のすぐ上流にいた細川昭徳さん(78)は午前中だけで38匹を確保。「流れの中心だけでなく、奥側で流れが緩くなったトロ場や手前の浅瀬など、幅広くオトリアユを入れて誘った」。下流でスタートから午前10時30分までに44匹を掛けた長畑仁志さん(68)も、「例年にない数釣りができた」と満足そうだった。

仲間4人でやってきたという鈴木昌美さん(64)は、兄勝美さん(67)とともに30匹釣った。前日から大網を選んでキャンプしていた。「朝9時までで入れ掛かり。久々に解禁のアユ祭りを堪能しました」と笑いが止まらなかった。

流心をはじめ、大きな石が水中にある場所では縄張りを作って居ついた良型の追いが活発だった。これがガツンとくるアタリで、釣り人を喜ばせた。逆に流れが緩くなる場所や、浅瀬などでは12~13センチの小型がモゾモゾと掛かることが多かった。

解禁当日の朝8時に漁協前で計測した水温は18・3度。平年よりも1~2度低かった。ただ、アユのエサとなるアカ付きは良く、川の中にアカが黒光りする石も点在していた。

解禁4日前の16日午後1時から約1時間、漁協では試し釣りを行った。上流域(茂野島から上流)、中流域(清地付近)、下流域(承元寺~新幹線下)に3人ずつ入り、10~19センチが全部で215匹と数、型ともに例年並みだった。

ふたを開けたら、場所選びによって釣果に差は出たものの、午前中だけで満足して帰る人もいた。地元漁協では「近年まれにみる釣果。苦情は1件もなかった。滑り出しは上々です」と話していた。

これから本格的な梅雨のシーズンになり、まとまった雨も降る。水が腐り気味だった分、条件は好転しそう。「水が出て1メートル増えても、3割のアカが残る。小島中学校前、和田島など、残りアカで狙えるポイントもある」と、オトリアユを扱う「あこがれ亭」の柿沢健太郎さん(48)は言う。また、今は水の流れが緩い場所でも釣れているが、夏になれば流れのある場所に分があるという。【赤塚辰浩】

<6月1日に関東の主要河川で解禁>

6月1日には栃木・那珂川など、関東とその近辺の各河川でも解禁となる。各漁協などに問い合わせると、「昨年よりも遡上(そじょう)は多い」(神奈川・酒匂川漁協)、「放流以前に袋田地区でもハミ跡が見られた」(茨城・久慈川漁協)、「例年よりも遡上は早い」(静岡・気田川漁協)など、期待が持てる河川もある。

自然災害に加えコロナ禍でこの2年、思うような釣りができない人も多いはず。今月21日から、まとまった雨が降り稚アユの遡上が見込めそうだ。

◆友釣り 川の中で縄張りを持つアユを釣るため、オトリのアユに掛け針をつけて泳がせる。縄張りに入ってくるアユを、体当たりして追い払おうとする習性を利用して引っ掛ける。全国で5~6月から始まり、7~8月の夏場に最盛期を迎える。静岡・狩野川発祥とされているが、諸説ある。

▼釣り宿 興津川「あこがれ亭」【電話】054・393・3814。日釣り券1500円、現場売り2500円、年券7000円。オトリアユ1匹600円。