アジのサビキ釣りに、サイマキエビで狙うマゴチ、マダコのテンヤ釣り、ルアーのシイラ、アユの友釣りなど、かんかん照りの夏に盛期を迎える人気魚種がある。そこで気を付けたいのは「暑さ対策」だ。しっかり水分補給をして、熱中症にも注意しながら釣りをするにはどうしたらいいのか? バスプロであり、あらゆる釣りに詳しい茂手木祥吾さん(45)にアドバイスしてもらった。

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うっとうしい梅雨が明ければ、炎天下のベタナギでの釣りが待っている。茂手木先生、「水分補給を含めた食事」「日光対策」「アフターケア」を命を守る3本柱として挙げてくれた。

■水分補給を含めた食事

何を飲むかは個人の好み次第。とはいえ、「コーヒー、紅茶、お茶はカフェインを多く含んでおり、利尿作用が強い。脱水するだけで、体に吸収されるよりも先に出ていってしまいます」と茂手木先生は言う。おすすめは、ミネラルウオーター、麦茶、スポーツドリンクなど。それも、200ミリリットル程度を小刻みに飲む。何か、マラソンの給水と同じ感じだ。

「釣れているからといって、水分補給を我慢して後でペットボトル1本丸のみする人、同時にそこで菓子パンを2個まとめて食べる人とかいます。これは体に負担がかかるだけ」。

むしろ、道中ではパンやおにぎりを半分と、麦茶やスポーツドリンクを200ミリリットルというパターンを推奨する。

「どうしても釣りながら水分をという人には、経口補水液がいいでしょう。僕たちはバス・トーナメントの時に使っています」。

あとは、ゼリー飲料。これと水分を同時に取ることで吸収率を上げられる。

もう1点、強調するのは「モグモグタイム」だ。冬季五輪のカーリング女子とか、将棋のプロ棋士の「勝負メシ」に似ている。

「釣りながらチマチマと食べるは楽かもしれませんが、いったん集中を切りましょう」。時間を使って腰をすえ、ゆっくり座って手を動かす。そこで、氷を効かしたクーラーに入れたキュウリ、トマト、バナナやソバなどを口にする。

沖釣りの場合、入れ食いなどの通称「ゴールデンタイム」があった後、パタッと当たりが止まる時がある。船長がポイントを移動するため、仕掛けの巻き上げを指示する。このタイミングで釣り座などに腰を下ろして食べるのだ。

「釣りをしたい。もっと釣りたいという欲求が勝って、食事もそこそこに仕掛けやルアーを付け替える人とかいます。スイッチをオフにして別のことをする。その後で釣りのスイッチを再度オンにするという切り替えが大事です」。

ところで、船酔い対策ってあるのか?

「まずは前日の夜にしっかり糖分を含めたエネルギーを補給しています。その時に酔い止めを1錠飲んでおきます。船酔いが心配だからと、前の晩と当日の朝食を食べないとか、少なめにするのはかえって酔い止めが効きません。少しでも胃に入れておくことです」。

■日光対策

年々、紫外線は強くなっている。帽子とサングラス、日焼け止めは必需品。また、対策の基本は、「なるべく体を露出しないこと」だ。ツバの広い麦わら帽子でタオルを首に巻き、捨ててもいいような長袖の開襟シャツで釣っているおじさん、格好は正解です。

「どうしてもTシャツと短パンでという人には、アームカバー、ネックカバー、フェースカバーとタイツを薦めます」。

夏場の釣りの衣類は、スポーツウエアと同じで肌にピッタリ。吸水性と速乾性に優れている。汗でぬれた水分を蒸発させると同時に、肌を冷やす効果も含んでいるという。

「各国の競技力だけではなく総合力が問われる五輪と同じで、釣り用品メーカーの暑さ対策も、各社の総合力が問われています」。

ほかにも、対策はいろいろ。「熱のこもりやすい長靴を避けてカカトのあるマリシューズやスポーツサンダルと防水靴下をはく」「アルコールを含んだ男性用のフェーシャルペーパーを使う」「バケツに足を突っ込む」「氷水を頭からかぶる」などなど。

「サンダルとかはだしは滑りやすいうえ、釣った魚が暴れたり、ヒレに毒を持つ魚に刺される危険性があるので勧めません」。

■アフターケア

釣りから帰ったら、ひとっ風呂浴びて冷房の効いた部屋で冷たいビールという人、ちょっと待った。釣りのアフターケアの最重要事項は、「糖分の補給」だ。

帰り道にうまいラーメン屋に入るとか、地元のおいしい「刺し身定食」を食べて帰るという人、いますよね。中には港に着いたらクーラーの中で冷やしておいた「あんみつ」や「果物の缶詰」を食べるのを楽しみにしている人もいますね。疲れを取るための正しい選択です。

3つの柱、釣り人だけではなく、体育会系の学生、就活生、炎天下で働く人らにも当てはまるのでは? 暑い夏を乗り切るコツ、覚えておいてください。

<熱中症のアドバイス>

茂手木先生、自らの釣り経験から熱中症のサインとして、「汗が出にくくなって、フラフラしたり、舌が乾いてくる」という症状を挙げてくれた。バス釣りのガイドもしており、「自分の体力を過信する人が最も危険」と指摘する。現場で吐き気やけいれんが出たら、手遅れ。

熱中症とみられる場合、木陰(沖釣りなら船長に申し出て、船室を使わせてもらう)で体を冷やし、水分をゆっくりと飲む。ズボンのベルトなどを緩め、脇の下や首、鼠径(そけい)部などを冷やすなどの応急処置を施すという。

◆茂手木祥吾(もてぎ・しょうご)1976年(昭51)5月26日、東京都練馬区生まれ。3歳のころから祖父や父に連れられ、釣りを開始。船、磯、渓流からルアーまですべてをこなす。23歳でバスプロに。現在、日本の中でも実力者がそろう、日本バスプロ協会のトップ50メンバーに名を連ねる。2012年(平24)には福島・桧原湖で優勝もしている。