「アニキ」こと俳優哀川翔(60)が、好調の続く東京湾のタチウオ釣りに釣戦した。川崎「つり幸」(幸田一夫船主=72)から走水沖へと出船。コノシロの切り身をエサに誘った。気まぐれな「幽霊魚」を相手に「目標は5匹。ボウズ(釣果0匹)覚悟」と出船前は話していたが、開始早々から食いが立って予定数はあっという間に終了。はたして何本、刀狩りはできたでしょうか?

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「女心と秋の空」ではないが、タチウオはとんだ「お天気様」だ。前日に爆釣したかと思うと、翌日はまったく口を使わない。1日の釣行の中でも「天国と地獄」のような光景に出くわす。この日もそうだった。

タチウオ釣り4回目、このうちエサ釣りは2回目のアニキ、ふられることも覚悟していた。午前8時、右舷ミヨシ(最前方)から4人目に陣取ってサオを出す。朝一番、タチはご機嫌だった。1投目から釣り仲間のエイジさんが掛けると、バタバタとあちこちでサオ先が絞られ、タチウオが取り込まれる。まさに「刀剣乱舞」の状態になった。

開始10分、グググッとアニキの手元に明確なアタリが伝わった。軽く合わせると針掛かりした。獲物の重みを感じながら巻き取る。フッと食い上げて軽くなったかと思うと、また重くなる。タチが釣り人をたぶらかす。「まったく油断も隙もあったもんじゃねぇよ」。軽くいなしながら、メーター級を取り込んだ。

この後も水野聡船長(65)の「50メートルから36メートルまで誘って」などと指示するアナウンスに合わせ、サオを1回軽くシャクってリールを1回転させる誘いで数を伸ばす。時折、鋭い歯でハリスを切られたり、合わせ損ねてバラしてしまう。午前9時40分、思わせぶりなタチは手持ちのアニキのサオに1回、2回とエサをかじってアタリは出すが、食い込まない。もう1回待つと、しっかり食い込んだ。指4本級の銀ピカの魚体が海面から飛び出した。これで5匹。「目標は2ケタに上方修正だ」。張り切ったまでは良かったが、パタッとアタリが止まった。

神出鬼没な「幽霊魚」の本領発揮だ。高活性から一転、「技術」と「忍耐」と「柔軟性」が問われた。

アニキは過去、日本テレビ系の年末大型時代劇「勝海舟」で土佐浪士の岡田以蔵役だった。NHK大河ドラマ「真田丸」では大坂夏の陣で討ち死にした武将、後藤又兵衛役を演じている。「タチまわり」はお手の物のはずだ。

周囲を見回すと、リールの回転を1シャクリにつき1回転から、1シャクリ半回転とか、1シャクリ4分1回転と少なめにしている。「誘いの幅を短くするのか」と早速、取り入れた。仲間で、最終的に18匹でサオ頭になったヤマちゃんこと山岡拓矢さん(37)は、水深45メートルでエサをピタッと止めて置きザオにしている。

アニキ、この2パターンを使い分けて9匹にまで伸ばした。「あと1匹で2ケタ達成だ」。ここで肩に力が入りすぎたか、正午すぎまで痛恨のバラシ4連発。「負のスパイラル」に陥ったかにみえた。

「翔さん、もう少し大きく合わせた方が食うよ」。ここで、水野船長が貴重なアドバイスをくれた。

それまでハリス切れを恐れて、合わせを小さくしていた。絶妙のタイミングの助け舟に、アニキは2匹を追加した。「よし、目標を達成したぞ」と、ご機嫌で帰港した。

幸田船主によると、「1メートルを切るサイズの数釣りだった夏場から、涼しくなるに釣れて1メートルを超える良型が目立つようになる」という。アニキが乗ったのと同じ日、テンヤ船では原田貴秀さんが130センチの大型を釣り上げた。船宿の前で目の当たりにすると、「今度はこんなサイズを釣ってやる」と、新たな刀狩りへと闘志を燃やしていた。【赤塚辰浩】

▼船宿 川崎「つり幸」【電話】044・266・3189。タチウオ出船午前6時50分。エサ釣りは氷・エサ・仕掛け付き9500円。ルアーとテンヤは氷付きで9000円。エサ釣り用のテンビンはライトタックル(LT)のアジで使う20センチ前後の腕長だとアタリが取りやすい。ハリスはフロロ6~8号、長さ2メートル、針は2/0~3/0。鋭い歯で切られるため、仕掛けは多めに。針を外すプライヤーや獲物をつかむクリップは必需品。オモリは潮の速さにより30、60、80号と使い分ける。LTアジもあり、午前船はタチウオと同じ6時50分出船、午後船は同午後0時30分。ともに6500円(コマセ・氷・仕掛け1組付き)、女性と中学生以下同3500円。