ヒラメにブリ、サバ、フナなど、上に「寒」の文字が付く魚は、寒い時季だからこそ旬を迎えたり、釣趣あふれる。サオを出すに当たって、気を付けたいのは防寒対策。体が冷えてはお話にならない。天気の急変で、冷たい風が突然吹くこともある。保温と防水機能が付いた暖かい服装は必需品だ。今年7月に「暑さ対策」でも登場してもらったバスプロの茂手木祥吾さん(45)に、解説で再度ご登場願いましょう。

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「人は体の先端から寒さを感じます」と、茂手木プロは言う。熱が抜けていく頭、手、足の3カ所を必ず守ることを鉄則にしている。身に着ける定番として上から順に帽子、首に巻く物、シャツやタイツといった「インナー」、その上に着るトレーナーなどの「ミドラー」、最も上に着る防寒着「アウター」、ソックスや防寒ブーツなど、釣行に必要な外装を挙げた。

まずは頭。「フードだけでなく、耳当て付きの帽子、ニット帽など、頭部を保護すれば体感プラス3度になります」。

次いで首。軽視しがちだが、ここが重要だ。ネックウオーマーが最適。なければ厚手のタオルを巻くだけでもいい。「首の部分で、体から抜ける暖気を保つ役割があります。夏は放熱させないと大変ですが、冬は暖かい空気を逃さないためにも『首筋が寒い』」という状況は避けましょう」(茂手木プロ)。

上半身、下半身ともに、肌に最も近い部分で保温するのがインナー。ミズノ「ブレスサーモ」やユニクロ「ヒートテック」などを思い浮かべる人もいるだろう。水分を吸った化学繊維の生地が熱反応を起こして、温かくする。肌と生地の間で暖かい空気膜を作ると思えばいい。

インナーをもっと温かく保つのが「ミドラー」。起毛の付いたトレーナーやフリースを着込む。ただし、風に弱いという難点があるため、一番上にゴアテックスや中に綿が入って風を通さないウインドブレーカーとしての防寒服=「アウター」を着る。釣り用の上下がない人には、防水と保温機能に優れたスキーウエアを推奨する。下も同じ。パンツの上からタイツ、さらに裏起毛の保温タイプのジーンズなどを重ねて、防寒服でガードする。

「私の場合は原則上下とも4枚。寒さが厳しいと思ったら厚手の開襟シャツを1枚増やして、5枚にします。空気のメカニズムを理解して、暖気を逃さない工夫をすれば、少ない枚数で効率的に動き回れます」(茂手木プロ)。

置きザオなどの動きの少ない釣りなら重ね着してもいいかもしれない。着込むと動きづらかったり、手返しの良さを優先するのなら、機動力重視の服装がいい。

あと、茂手木プロが注目しているのは「電熱ベスト」。肩の周りが楽でキャストしやすいうえ、保温力に優れているからだ。「今年の夏場にファン内蔵ベストが注目されました。その逆です」。【赤塚辰浩】

◆茂手木祥吾(もてぎ・しょうご)1976年(昭51)5月26日、東京都練馬区生まれ。3歳のころから祖父や父に連れられて、釣りを教わる。渓流からルアーまで、場所も淡水、磯、船とオールラウンドにこなす。23歳でバスプロになり、日本バスプロ協会の「トップ50」に名を連ねたことも。2012年(平24)には福島・桧原湖のトーナメントで優勝している。現在は同湖の釣りガイドをしながら、釣りをメインとした映像制作クリエーターとして活躍中。

記者の対策

記者も独自の防寒対策をしています。実は冷え性のため、暖かい服装と貼るカイロだけではなく、首の出っ張り部分に2枚、約2センチ四方のおきゅうを貼って保温します。手先が冷えたら、バケツで海水をくんでそこに指を入れます。気温は10度以下だけど、海水温は冬場でも15度前後。こちらの方が温かいから。すぐに手を出して乾いたタオルでふかないと冷えるので注意。サオを握って再度手先が冷えたら、海水をくみ直します。

帰港後、時間があったら寄るのは途中のスーパー銭湯や温浴施設。お湯につかって疲れを取り、温かい食べ物で胃袋も満たします。こちらはアフターの「防寒対策」。釣りは「総合レジャー」です。

足元のカイロもお忘れなく

冬場の釣りでは必需品の貼るカイロ。茂手木プロは「インナーに貼るとやけどしやすいので、ミドラーの上、特に暖かさを感じられる首もとや腰に貼ります」と言う。それでも寒い場合、足の付け根、脇の下に近い大動脈が走っている部分がいいとしている。

意外に忘れがちなのは、足元。防寒ブーツの内側に靴用のカイロを張る。「足先に間隔がなくなったら、凍傷への第1歩。1度冷えた体は温まりにくい。寒くなってからでは遅いです」。

桜マーク適合のライフジャケットの着用を

ライフジャケット(以下ライジャケ)の着用が18年2月1日から全面義務化されたのはご存じの通り。だが来年2月1日より、乗船者にライジャケを着用させなかった船長に対して違反点が科せられ、それが累積すると最大6カ月の業務停止処分となるのはご存じだろうか?

釣り人にとって問題となるのは、現在使用のものが国土交通省が定める桜マーク適合であるかということ。ライジャケには、水中で浮き上がる力が7・5キロ以上あることや顔を水面上に維持できることなどのさまざまな安全基準が定められ、国土交通省が適合を確認したものには桜マークが付けられている。来年2月1日以降、この桜マーク適合モデルでないと、お世話になる船宿に迷惑が掛かってしまうことになる。

神奈川・川崎「つり幸」幸田一夫船主(72)は「ウチでは17~18年前からライジャケ着用はお願いしてきています。レンタルも全て桜マーク適合を用意しているので、お客さんのものが適合でない場合、言っていただければ適合モデルのレンタルが可能です」。

何よりも、自分の命を守るために重要だ。国土交通省のHPによれば、船舶からの海中転落時、ライジャケ着用の生存率87%に対して、非着用は39%。実に2倍以上の生存率となっている。もちろんこれは正常に作動してだ。いくつかのタイプがあるが、沖釣りならタイプAの用意が無難だ。

まずは現在使用のものが桜マーク適合モデルかを確認し、もし適合モデルでなかったらこの機会に見直してみよう。 【川田和博】