静岡・興津川で20日、静岡県内河川でトップ、東日本でも2番目となるアユ釣りが解禁を迎えた。昨年9月、静岡市内を襲った台風15号は“50年に1度”とも言われる甚大な被害をもたらした。興津川もその1つ。河川全体の100カ所以上で道路崩落などの被害が発生。日刊スポーツ共栄会「あこがれ亭」前も川相が大きく変わってしまった。各ポイントを取材すると、災害を乗り越えての解禁となったことが、分かった。

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取材前日、記者の携帯電話が鳴った。「あこがれ亭」柿澤健太郎代表(50)からだ。「復旧工事が継続中で、まだ35カ所残っている。10日ほど前の雨の濁りが取れる前に、昨日の雨でさらに濁り、増水もしている。本流は釣りどころではない」。毎日、川相をチェックしている柿澤代表の言葉に間違いはない。だが、アユ釣りができないとしても、その状況を伝えるのも釣り面の使命。「それでも行きます」と即答した。

解禁日当日、あこがれ亭前を確認すると、対岸の石垣にはまだ漂流物が残っていた。水は緑色に濁る“ささ濁り”状態に加え、30センチ以上の増水。柿澤代表は「以前なら1日あれば濁りは取れたけど、工事の影響で今は2~3日以上かかる。これではアカがつかない。仕方がないけど、今年は厳しい」と話し、「オトリも8匹しか売れていない」と嘆いた。

昨年の解禁時、あこがれ亭前に入川した「チームあこがれ」の岡部春美さん(63)は「今年はどこに入ったらいいのかも分からない。とりあえず、様子を見てみましょう」。高瀬橋から分かれる支流の中河内川入り口付近にはサオが林立。柿澤代表によれば「ここは工事が入っていない場所で、試し釣りで釣れたポイント。おそらくここしかない」。だがすでに満員で、入れそうな場所はなかった。

そこから本流上流を2カ所チェック。大島橋上流は「水は澄んでいるけど、アカが全くついていない。これでは釣れる気がしない。このあたりにセメントが敷いてあったけど、砂で埋もれて全く見えない」と岡部さん。続いて、少し下った大網地区をチェック。同所は2年前の解禁時に訪れた場所だが、駐車場の車もチラホラだった。「ここも濁りがきつく、増水もしている」と苦笑。支流となる黒川の復旧工事が全く手を付けられない状況で、黒川の濁りが本流に流れ込んでいるようだ。

大網橋下流では、旭友会の石井良秋事務局長(66)がサオを出していた。「1時間ほど前からサオを出しているけど、全く反応がない。流心は流れがキツく、底が砂っぽい。岸側は漂流物が多く、根掛かりしてしまう。オトリを1匹ロストした」とお手上げ状態だった。結局今年、岡部さんがサオを出すことがなかった。

そんな同所で伊藤里美さんは、わずか15分ほどで2匹を掛けた。直樹さんと夫婦で解禁に挑んだが、「流心は流れがキツかったので手前の岸川にオトリを流したら掛かりました。普段なら釣れないような場所で釣れました」とほほ笑んだ。

柿澤代表によれば、「今年は成魚放流なので釣れれば大きいが、魚の絶対数が例年よりも少ない」。今後については、「濁りが取れれば釣りにはなるでしょう。でも、川相がフルモデルチェンジしてしまった。試し釣りの結果を見ても、川底を触った場所は釣れていない。以前のように川が落ち着くまでに3年はかかるかもしれません」と予想した。

取材で移動をしていても、道路のあちこちが崩落の復旧工事中で片側通行だったり、護岸には土のうが積まれている場所も多い。川には重機も入ったままだ。それだけ大きな被害を受けた興津川で解禁を迎えられたこと自体がある意味奇跡であり、実は喜ぶべきことかもしれない。そう強く感じた。【川田和博】

■5時間ほどで15匹

中河内川の高瀬橋下流側に入った河津安江さん(73)は「5時間ほどで15匹取れたけど、台風の爪痕が大き過ぎるね。でも、こればかりは仕方がない。午前中で30匹取れないと午後は厳しい」と正午過ぎに納竿した。

■あこがれ亭 4年ぶりに大会

興津川「あこがれ亭」では9月24日、昨年雨で中止となったアユ釣り大会を4年ぶりに開催、参加者を募集する。

▼募集人数 100人

▼参加費 3000円(傷害保険料含む)。釣り券(年券、日釣り券)は各自購入。

▼競技方式 友釣り限定◎予選=オトリ2匹含む総匹数(同数時は総重量の重い方が上位)。入川は2区間でくじ引き抽選。◎決勝=予選上位10位タイとシード4人(2019年優勝、準優勝、3位とあこがれ亭推薦)。順位は<1>総匹数<2>総重量<3>決勝の入川順位<4>年長者優先。なお、予選&決勝の釣果は本部で回収し、地元福祉施設に寄贈。

▼大会日程 午前6時30分本部(茂野島キャンプ場)受け付け。午前7時30分開会式(競技説明&集合写真撮影)。同8時予選開始。同11時予選検量。午後0時30分決勝開始。同2時30分決勝検量。同3時表彰式。

▼申し込み方法 「興津川アユ釣り大会事務局」と明記の上、氏名(ふりがな必須)、生年月日、性別、郵便番号、住所、携帯電話番号、所属クラブ名、興津川入漁券の有無を明記の上、ファクス(03・5550・8828)か、〒104・8055日刊スポーツコンテンツ本部社会/地域情報部「興津川アユ釣り大会事務局」へ。9月10日必着。

▼問い合わせ 興津川「あこがれ亭」【電話】054・393・3814。参加者は大会前日宿泊も受け付け。