医療、介護の原因となる「認知症」を食い止めるには脳の健康を維持することが大切だ。脳細胞を丈夫にするためには、脳細胞に悪影響を与える血栓を抑えることが必要。さらに、酸素や栄養素を脳細胞に運ぶためには赤血球と血管の柔軟性も欠かせない。予防医学の権威である早稲田大学研究院の矢沢一良教授に話をうかがった。

脳を元気にする栄養素…〝ぴんころ〟実現へ

認知症の発症をできるだけ抑え、ぴんぴんころりを実現するには、脳の健康を維持することが大切だ。反対に飲み過ぎ、睡眠不足といったリスクファクターをできるだけ遠ざけ、脳細胞へエネルギーを運ぶ血流をよくしてやることが大事である。矢沢教授はこう話す。

「脳細胞のエネルギーとなり得るものはブドウ糖です。一番大切なことはきちんと適切な量の糖質を取ること。また、酸素を供給するために重要な血液の流れをよくすることが非常に重要です。血液は栄養素と酸素を脳に供給し、同時に脳細胞から老廃物を受け取って、尿として体の外へと出す重要な働きをしているのです」

血管を流れる血液は、主に酸素を運ぶ赤血球、白血球、血小板の3つの成分からなる。「残念なことにストレスや体内で発生した活性酸素によって血小板が固まりやすくなり、毛細血管で血栓を起こしやすくなるのです。血小板凝集が起こり、脳細胞へ栄養素が運ばれなくなるのです。これを抑えるのがイチョウ葉エキス、EPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)などの、オメガ3系の脂肪酸です」

血流をよくするにはそれが流れる血管の柔軟性が必要だ。血管が硬いと血栓を起こしやすいためだ。

「血管をつくる細胞を血管壁細胞といい、この細胞膜の成分のひとつがDHAです。つまり、DHAは脳神経細胞を柔軟にするだけでなく、血管にも良い影響を与えるというわけです」

イチョウ葉エキスの成分には血栓を起こす血小板凝集を抑え、さらに、血管の拡張作用がある。

「ホスファチジルセリンという成分も神経細胞を柔軟にしてくれることで知られています(神経伝達機能の向上)。イチョウ葉エキスは脳の神経細胞には入らないけれど、血流をよくするという意味でかなり重要です。ドイツとスペインではすでに認知症改善の薬になっているほどで、認知症の予防にはこうした後方支援が必要だということですね」

プロフィル
松本航(まつもと・わたる)
◆矢沢一良(やざわ・かずなが)1948年(昭23)東京生まれ。京都大学工学部卒業、農学博士。東京海洋大学「食の安全と機能に関する研究プロジェクト」特任教授等を経て現在、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門研究院教授を務める。予防医学、ヘルスフード科学、脂質栄養学、海洋微生物学、食品薬理学を専門とする。