“お通じ”をよくする整腸作用から始まった腸内環境の改善は、研究が進むにつれて体を病気から守る免疫力の向上に関係することがわかってきた。免疫力もまた「予防医学」のカギを握るキーワード。いつまでも元気に長生きするためには欠かせない要素なのだ。全3回連載の第2弾。引き続き早大部門長の矢沢一良教授に聞いた。

“外敵”とも戦う最前線の腸内細菌

外の環境はさまざまな菌にさらされている。口から肛門までは1つの管になっており、体外と近い場所である。口から入った食べ物は胃、腸で消化吸収されるが、腸内では有益な栄養素だけでなく、さまざまな有害物質も血中へ取り込まれる。血液中に有害なものが侵入し悪さをしないよう守ることも腸内細菌のはたらきだ。腸内細菌は“外敵”とも戦ういわば最前線にいる兵士なのだ。

「栄養素は、胃や腸を通じて血液中に吸収されて全身に運ばれた後、臓器、細胞の中で利用されます。もし毒が血液中を回ったら、肝臓は活性酸素を大量に出して分解し身を守る免疫力が備わっています。がんを抑制するのもこうした仕組みです。腸の中では吸収される前に腸内細菌が支援しているわけです」

特殊な抗体分泌 感染症から守る

「腸内細菌はビフィズス菌などの善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類があり、善玉菌が多いほど免疫力は高くなると言われています。腸内細菌のバランスが乱れると免疫力の低下に直結しますが、腸内の環境を健全に保っているのは100兆個もの膨大な数の腸内細菌。これが免疫力を高めるには、菌は生きていても死んでいてもいいのです」

腸管は栄養素の吸収と免疫機能と、2つの働きを担う。ウイルス感染を防ぐために腸の上皮という部分に何層ものバリアーがあり、異物を排除するために特殊な抗体と呼ばれる物質を分泌して感染症、アレルギー物質などから身を守る。

「ベータグルカンという、きのこや乳酸菌にも多く含まれている成分に効果があります。もともときのこには風邪に効くといったことが知られていました」

プロフィル
矢沢一良(やざわ・かずなが)
◆矢沢一良(やざわ・かずなが)1948年(昭23)東京生まれ。京大工学部卒業、農学博士。東京海洋大学「食の安全と機能に関する研究プロジェクト」特任教授等を経て現在、早大ナノ・ライフ創新研究機構規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門・部門長を務める。予防医学、ヘルスフード科学、脂質栄養学、海洋微生物学、食品薬理学を専門とする。