フレイル予防の必須栄養素として、前回お話ししたタンパク質のほかに、カルシウムとビタミンDがあります。カルシウムは骨量の維持に必要であり、健康な骨と歯の源になるほか、血液の凝固や心機能、筋肉の収縮等にも関わります。ビタミンDはカルシウムの吸収に欠かせない栄養素であり、骨粗しょう症の予防や改善にも重要なので意識して取るようにしてください。

 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、1日のカルシウム摂取目標量は650~800ミリグラム(上限は2500ミリグラム)、ビタミンDは5・5マイクログラム(上限は100マイクログラム)です。

 カルシウムは乳製品、骨ごと食べる魚、殻を食べるエビ、大豆、葉物等に多く含まれます。代表的な食品で例を挙げると、サクラエビ(690ミリグラム)、カマンベールチーズ(460ミリグラム)、モロヘイヤ(260ミリグラム)、厚揚げ(240ミリグラム)、牛乳(110ミリグラム)。カッコ内は100グラム当たりの含有量です。一度にサクラエビを100グラム食べるというのはあまり現実的ではありませんよね。3食でバランス良く取れるよう心掛けてください。

 ビタミンDは魚に多く含まれます。アンコウの肝(110マイクログラム)、サケ(32マイクログラム)、ウナギのかば焼き(19マイクログラム)、サンマの開き(14マイクログラム)といった具合です(※カッコ内は100グラム当たりの含有量)。

 居酒屋でも手軽に取れそうなメニューが並びますが、一点だけ気を付けなければならないのが塩分の取り過ぎです。男性で8グラム未満、女性で7グラム未満が食塩の推奨量ですので、味付けや調味料にも十分配慮してください。

 栄養素をサプリメント等で補うことも多くなりました。カルシウムの取り過ぎは高カルシウム血症や泌尿器系結石、前立腺がんなどの危険性につながるとされ、身体に余計な負担をかけることもあります。摂取基準をしっかり守りましょう。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。