歯科医院で歯磨きの仕方を習うことはあっても、ケアグッズについて教えてもらった経験がある方は少ないようです。

初診時に普段のお手入れ方法を伺うと、ブラッシングの回数も実にさまざま。漫然と同じケアを続けている患者さんもいます。「虫歯ケアのためにフッ素を歯に取り込みたいから、歯磨きの後はほぼゆすぎません」などとおっしゃる患者さんのお口の中を見ると、驚くほど歯石がびっしり。ご本人が気にしている虫歯よりも歯周病の方がひどく進んでしまっているというケースもあります。このように自分の口内環境に合っていないケアを続けることが歯を失う原因につながりかねません。

ケアの基本はプラークをこそげ落とす機械的清掃(全体を磨く歯ブラシと隣接面清掃のためのデンタルフロスや歯間ブラシなど)がメインで、プラークの元になる菌の数を抑制したり、歯面に付着しづらくなるような成分を含んだ化学的清掃(歯磨き剤や洗口剤)がそれをサポートする役割だと捉えてください。

特に皆さんから質問が多いのは洗口剤の立ち位置です。デンタルリンス、含嗽(がんそう)剤、洗口液等、呼び名はさまざまで、抗菌作用や抗炎症作用のある薬用成分のほか、界面活性剤や酵素などを含みます。洗口剤は歯肉縁上(目に見える部分)プラークの破壊や殺菌、プラークの再付着を防止する効果は認められていますが、歯肉縁下(歯周ポケット内)のプラークに関してはポケット内0・5ミリ程度にしか作用しないことが学術的に確認されています。

このため、歯科医院でクリーニングをする際には、超音波を使った器具やシリンジで直接ポケット内に液体を作用させることがあります。皆さんが普段お使いになる際は、その特性を理解して、ブラッシングの補助的役割として洗口液を取り入れてもらうことが大切です。次回は具体的な成分についてお話しします。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。