洗口剤を選ぶ際にどんな点を重視しているか、患者さんにヒアリングすると、「口臭」「殺菌」という答えが返ってきます。口臭には病的口臭(歯周病や虫歯など口の中の疾患や汚れが原因の口臭)と生理的口臭(起床時、緊張時、空腹時など口が渇いた際に生じる一時的な口臭)がありますが、自分で対策を取れる範囲は限られています。口臭が何から発生しているのかをきちんと見極めないと、効果が得られないのです。舌の汚れや歯面に形成されたプラークは極力減らす、という心掛けは大切ですが、病気があるなら根本解決にはなりません。まずは治療を受けることです。

前回お話ししたように、洗口剤で口をゆすいでカバーできる範囲は歯茎より上の部分と、歯周ポケットの入り口付近です。自力では取り除けない細かい部分の汚れを歯科医院でのプロフェッショナルケアでしっかり除去し、その良好な状態を長時間キープするための手段として洗口剤を使用してもらうのが最も効果的な取り入れ方だと思います。

洗口剤に含まれる薬用成分として、欧米やオーストラリアでは抗菌成分を配合した商品が広く利用されています。中でもグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、エッセンシャルオイル(EO)、塩化セチルピリジウム(CPC)の歴史は長く、使用実績や臨床研究の成果も数多く発表されています。アメリカ歯科医師会(ADA)では認可基準として、歯肉縁上プラーク(歯茎より上のプラーク)と歯肉炎に対する有効性と安全性の評価を徹底しており、6カ月以上の比較臨床試験が義務づけられています。この結果によると、継続した使用で初めて効果が表れる場合が多く、患者さんごとの口内環境に合った製品を選び、適切なプログラムを立てて長期間取り組むことが重要だと分かります。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。