骨粗しょう症という病気をご存じでしょうか。世界保健機関(WHO)は「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱(ぜいじゃく)性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患」と定義しています。骨の強さに関与する「骨密度の低下」と「骨質の劣化」の両方が影響し合い、骨折リスクが上がる病気と捉えてください。

特に女性は、男性に比べるともともとの骨量が少ない上に、閉経後のホルモンバランスの乱れで骨密度が下がる傾向にあるため、更年期以降に罹患(りかん)率が上がります。歯科治療の際、歯槽骨(歯を支える骨)が急激に弱ってきたことで発見されることも多い疾患です。

骨折はドミノのように連鎖するといわれており、背骨や大腿(だいたい)骨といった体の軸になる部分を1度骨折してしまうと、また新たな骨折を招く確率がぐんと上がるそうです。「成人になってから軽い転倒で骨折した」「日常的な運動量が30分未満である」「45歳以前に閉経した」「両親のどちらかが猫背である」「よく転びやすい」などの項目に当てはまる方は、専門機関で検査を受けてみることをお勧めします。

特定の病気や、服用している薬が原因となって発症する骨粗しょう症もあります。代表的なものでは、関節リウマチ、副甲状腺機能亢進(こうしん)症などの内分泌疾患、慢性腎臓病、糖尿病をはじめとする生活習慣病で頻度が高いとされています。

骨は1度できあがってしまうと、その後、変化がないように思われがちですが、骨吸収(骨を壊す働き)と骨形成(骨をつくる働き)の絶妙なバランスで、古くなり劣化した骨がメンテナンスされ、新しい骨に置き換わります。しかし、骨粗しょう症になると、このバランスが崩れ、骨吸収がどんどん進んで骨形成を上回ってしまうことで、骨がもろくなるというわけです。このため治療薬としては、骨吸収を抑制する作用があるものが選択されます。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。