8月に発足した「目覚め方改革プロジェクト」(http://mezame-project.jp/)によると、製薬会社がこの春実施した30~60代男女2400人対象のネット調査で「朝すっきり目覚めた日はどう感じるか」を聞いたところ、「体の調子が良い」という人が約4割で最多。次いで「気持ちが安定する」と答えた人が3割以上いることが分かった。反対に目覚めが悪いことで日中のパフォーマンス(活動性)が低いと感じる人も多くおり、日常の生活に睡眠が及ぼす影響の大きさが明らかになった。一方、すっきりと目覚めるため工夫をしている人は、1割にとどまっていた。

プロジェクトメンバーの1人、東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科の岡島義(いさ)准教授はこう話す。

「睡眠科学では『眠るからこそパフォーマンスが上がる』という研究結果があり、睡眠の役割は能動的だと考えられている。睡眠不足になると風邪をひきやすくなったり、高血圧や肥満の割合が増え、2型糖尿病にもなりやすい。また、抑うつ感を高める危険もある。一方で、レム睡眠が出現すると幸福感が高まり、不安感が減少するという研究結果がある。つまり、睡眠は『削るもの』ではなく『確保するもの』という認識が必要です」

岡島准教授によると、17時間連続で覚醒した状態は、ビール中ビン1~2本を飲んだ状態と同じ。酒気帯び運転に相当するパフォーマンスしか発揮できないという。

「睡眠不足による日本経済の損失は、年間約15兆円といわれている。たばこの害によるものが約2兆円と推計されているので、睡眠不足の影響はいかに大きいか。この問題は顕在化しにくく、能動的な睡眠が経済損失の抑制につながることを認識する必要がある。徹夜の仕事などはなるべく避けて、よい睡眠をとるようにしてほしい」