悩みや苦しみをカウンセラーに話すことは、心の健康におすすめだ。東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科の岡島義(いさ)准教授(臨床心理士・専門行動療法士・産業カウンセラー)は、こう話す。

「自分の中で抱え込んでしまうのではなく、『外』へ出すということが大事なのです。その理由はよく分かっていないのですが、他人に自分の気持ちを説明するためには、それを自分でまとめないと相手に伝わりません。頭の中で考えているだけでは、なんとなく分かった気持ちになってしまうので、その作業がとても大切です」

考えごとを自分の「外」へ出すことで、聞いてくれている相手からの質問によって変化が起きる。

「思ってもみない質問だったりすると、そこで考える。つまり『井の中の蛙(かわず)』が、大海へ出ていくきっかけになるかもしれません。自分の中だけで考えていると、『井の中の人生』でしかないわけで、1度は外に出た自分が戻ってきた時、『ここにいるからいけないのかな』という気づきになる。そして、臨床心理士など訓練されたカウンセラーであれば、その人の悩みがきちんと整理できるでしょう。また、専門家に話すということ自体が、その人の心を軽くすることにつながるんだと思います」

身内や知人に打ち明けることもあるだろうが、心の専門家に話すことが、心の重荷を軽くするのに役立つことを知っておこう。

「高いところから見下ろす『俯瞰(ふかん)』に近いんだろうと思います。『なぜあの時、あんなことを言ったのだろう』『どうしてあの人からあんなことを言われてしまったのか』。そんなふうにクヨクヨと後悔している自分を、1歩距離を取って見ることになるのではないでしょうか。実は、こうした行動は、『考えながら話す』に似ているのです」

「考えながら話す」とは、例えばお笑い芸人が、自分の話をしながら、どのようにウケているのか、ちょっと引いた位置で見ている状態に近いと、岡島准教授は指摘している。