老若男女を問わず、今や現代人の暮らしに欠かせないものとなっているデジタル環境。電子メールは電話や手紙のやりとりに取って代わり、いつでも好きな時に欲しいものが手に入るオンラインショッピングは、実店舗をしのぐ勢い。人類に大いなる利便性をもたらしたが、その一方で急速に失われつつあるもの、それは人と人とのつながりや触れ合いだ。

高ストレス女性にはデジタル系依存症者が多いというニュースを耳にしたが、逆に考えると、デジタル環境に依存し、現実でのスキンシップや顔を合わせて話をするなどのコミュニケーションが減少すると、ストレス値が大きくなっているとも考えられる。興味深いのは、その理由が脳内物質「オキシトシン」の分泌の減少によるものではないかというのだ。

愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンは、ストレス中枢を沈静化し、ストレス物質のコルチゾールの分泌を抑制する働きがある脳内物質。つまり、オキシトシンが分泌されると、ストレスを抑えられる働きがあるということだ。オキシトシンは、かつては母乳の分泌を促す女性特有のホルモンであるとされていたが、近年の測定技術の進歩により、子どもを持たない女性や、男性の脳でも分泌されることが明らかになった。そして、オキシトシンが分泌されるタイミングこそが、親しい人とのスキンシップや親密なコミュニケーションなのだ。

デジタル環境に触れる時間が増え、顔を見合わせてのコミュニケーションが希薄になっている今、オキシトシンの分泌はスムーズに行われなくなっている。これがストレス性疲労を感じ、高ストレスといわれる人が増加している原因でもある。親しい人との触れ合いがストレスオフの鍵になるのであれば、積極的に促す必要があるだろう。今こそ、家族や友人など、親しい人との触れ合いの大切さを見直す時代がやってきているのではないか。

ストレスオフな毎日を送るために、親しい人との触れ合いの時間を意識的に大切にしてみよう。それがストレスを上手に抑えつつ、便利で効率的なデジタル生活の快適さをキープすることができる方法ではないかと考える。