昔から「寝る子は育つ」とよく言われる。このような古くから伝わることわざは、わりとバカにできないものが多い。顕微鏡もコンピューターもなかった時代から、実地で積み上げられた長い経験に基づいているものが多いので、学ぶ点がたくさんあるのだ。睡眠に関することわざといえば、他にも「春眠暁を覚えず」や「早起きは三文の徳」など、いまでもなるほどと思うものがいろいろある。いずれも生活習慣において重要な着眼点であり、現代の科学で筋が通っていることが証明できるものもある。

▼例えば「寝る子は育つ」。ただ寝るだけでなく、子供が寝るのだからぐっすりと深く眠っている様子が想像できる。このコラムでも何度か取り上げているが、良質な睡眠は健康な心身のために必要不可欠なものだ。子供の成長期には特に成長ホルモンの分泌が重要となるが、1日のうちで成長ホルモンが特に多く分泌されるといわれる時間帯が夜だ。「早起きは三文の徳」はどうだろう。日が沈んだら夕食をとり、湯船につかって体を温めたのち、早めに床に就く。日が昇るころに早く起きて朝日を浴び、しっかり体を動かす…良い眠りのために最適な体のリズムが導かれるのだから、得は三文どころではない。

▼逆に、遅くまで起き、深夜過ぎに就寝して朝寝坊。脳にも体にも疲れが残り、ぼーっとしたまま活動を始める。これでは生活リズムが悪循環になって良質な睡眠をとれず、体だけでなく心の成長にも悪影響と言える。さらには、この生活リズム、まるでストレスを抱えた大人たちの生活リズムに見えてくるから困ったものだ。大人の場合、睡眠によって得られるものは「成長」ではなく「回復」である。これを怠ると疲れがたまって免疫力が落ち、病気にかかりやすくなったり、また治りにくくなったりと弊害が多い。風邪をひいたら早く休養しぐっすりと眠ることが大切、と言われるのもそのためだ。

「昨日は徹夜でまいったよ」なんて自慢が通用する時代はもう終わった。生産性を上げるためにも、それぞれのライフスタイルに合わせて最適な睡眠と生活リズムを作ることが大切だろう。