健康のためには腹八分、とよく言われる。消化器官である腸は、第2の脳と言われるほど神経が細かく張り巡らされ、ホルモンの分泌などを通して脳と密接にかかわっている。腸への負荷がダイレクトに体調と関わることも多く、そのコントロールは食事量、食事内容にかかっている。

▼カロリー制限が霊長類の健康状態にどのような影響をもたらすかを明らかにするため、数十年にわたって行われてきた研究を紹介しよう。サルを2グループに分け、通常量のエサを与えたグループと、70%にカロリーを削減したエサを与えたグループで長期間飼育し、効果を比較するというものだ。なんと通常食を与え続けたグループではカロリー制限を行ったグループに比べ、約2・9倍も疾病のリスクが上昇し、かつ約3倍死亡リスクが上昇したという。単にカロリーを制限するのではなく何を食べたかについても論じられるべきだが、少なくともカロリー制限と健康には関係があることは分かる。

さらに1歩進んで、長寿遺伝子とも呼ばれ細胞の老化を制御すると言われる「サーチュイン遺伝子」が関わっているのではないかという研究も行われている。一定のカロリー制限を行い、ある条件が満たされると、通常は眠った状態の「サーチュイン遺伝子」のスイッチが入り、細胞の死滅を防ぐ機能が高まることが分かってきたそうだ。さまざまな考察がなされているが、いずれにしても「腹八分」には、健康寿命を伸ばす可能性が秘められているようだ。

▼しかし、この「腹八分」、実行の妨げとなるのが満腹感だ。満腹感が得られないと逆にストレスがたまってしまい、かえってリバウンドにつながってしまうことも。満腹感は脳の満腹中枢が刺激されることにより得られるものだが、これが満たされるのには15分くらいかかると言われている。そのためには、よくかむことが重要で、まずは一口10回ほどかむことから始め、食材を味わいながらおいしく食べるのがこつだ。飲み会でごちそうに舌鼓を打つのも結構だが、暴食暴飲にならぬよう「腹八分」を心がけ、今年も健康でいられるように心がけたいところだ。