年末年始や仕事始めの新年会などで、お酒を飲む機会が増えたという人も多いだろう。飲んべえにはうれしいことかもしれないが、世界的にはお酒に対して厳しい視線が向けられているのが現実。WHOが9月に発表したリポートによれば、なんと年間300万人が飲酒が原因で死亡しており、たばこの次は酒が規制されるのではといううわさもあるほどだ。

▼以前は私も飲酒が好きで、晩酌や飲み会も頻繁に行っていた。しかし子供が生まれ、仕事も忙しくなるという生活リズムの変化に伴い、飲酒によって睡眠時間を削ってしまいかねない事態に。医学界、薬学界に身を置くものとして健康を害することは避けなくてはならない、と悩んだ末、私の場合はきっぱりと禁酒をし、睡眠をしっかりとって朝を快適に迎えられる生活リズムを習慣づけることができた。

▼酒は百薬の長と言われており、適度な飲酒は健康に有用という報告も多い。しかしどこまでが「適度」で、どこからが「過剰」なのか? この線引きは難しいところだ。たとえば嫌なことは酒に流す、というのは薬理的には理にかなっている。アルコールはストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」を抑制するためで、たまったストレスをその場でさっと発散させる手助けになると言えるかもしれない。しかし習慣的に飲酒が続き、そのうち飲酒をしないとストレスがたまって仕方ないとなってきたら、これは「過剰」に飲酒に頼った状態で、危険信号だ。

厚労省の調査によると、日本の飲酒人口は7500万人といわれ、そのうちハイリスクな飲酒を行う人が1000万人、アルコール依存症とされている人は100万人とのこと。無意識のうちにアルコールに頼ってしまう日々が続き、依存症になっている可能性もある。肝臓はもちろん、すい臓もアルコールでダメージを受けるし、持続的なアルコール摂取は脳にも大きなダメージを与える。将来的な認知症との関係も確認されているという。

体をいたわるのであれば休肝日を週2日は最低設けること、そして自分の適量を守って楽しく飲むのがベスト。近年ではノンアルコール飲料もおいしく楽しめる。今年もよろしくの乾杯を、酔わずに楽しむ新年も悪くない。