トップアスリートやシンガー・ソングライターらが相次いで闘病を公表した「白血病」-。血液のがんであるこの病気の発生率は、年々上昇しているといいます。その病因は不明のケースが多く、検査、治療も長期間に及びます。米国の血液内科マニュアルを独学で修得した、自称「さすらいの血液内科医」、東京品川病院血液内科副部長・若杉恵介氏(48)が「白血病を知ろう!」と題して、この病気をわかりやすく解説します。

  ◇   ◇   ◇  

「痛くなくなく、ない検査です」。最近は骨髄穿刺(こつずいせんし)検査の時に、そのように説明しています。すると、患者さんは「はい…。えっ? 痛いんですか、痛くないんですか?」。まあ、こう聞いてくれれば、その後のトークで患者さんの緊張を何とか、和らげられます。

白血病の診断と治療効果判定に、もっとも重要な検査が、骨髄穿刺検査です。昔、テレビドラマで鈴木保奈美さんが、うつぶせになって「イヤ~~ッ」と言いながら検査されているシーン(顔だけでしたけど)が、記憶にあります。それだけ、「痛い」検査にはなると思います。

医師の骨髄穿刺の技術の取得は「指導医から教わった」方法であることが、多いようです。歌舞伎の「口伝」みたいな感じでしょうか? わたしも各病院でのやり方の違いに何度か、カルチャーショックを受けました。

一般的には、腰の骨(骨盤の腸骨)に、やや太い(12G規格、アイスピック状の)骨髄穿刺針を刺します。以前は、うつぶせで検査を受けてもらっていましたが、検査中おなかに圧迫感があるということで、最近は横向き(左側臥位)で行っています。開放感があったほうが、気が紛れていいみたいです。

ただ、この姿勢は脊髄穿刺と同じ姿勢になるので、看護師から時々脊髄用の針を用意されることがあります。緊張している患者さんの前で「針が違う!」とは言えませんから、針を受け取ってから、「骨髄の針…」と、ささやいて用意してもらいます。

局所麻酔薬の工夫で痛みが軽くなる工夫はしていますが、それよりは患者さんをリラックスさせるのが大事です。「お酒は普段は飲みますか?」「いやあ、結構飲みます」「う~ん、麻酔の量、増やしときますね」という、実は根拠のないトークを織り交ぜて行っています。その結果、「痛くなかったです」と言ってもらえると、ひと安心。「よその病院より…」と付け加えてくれたら、達成感さえ覚えます。

医師も、なるべく痛くないようにしています。患者さんも、あまり緊張せずに、受けてください。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として同愛記念病院勤務。米国の血液内科マニュアルに準拠して白血病治療をほぼ独学で学ぶ。多摩北部医療センターなどを経て、18年から現職の東京品川病院血液内科副部長。自称「さすらいの血液内科医」。趣味は喫茶店巡りと読書。特技はデジタル機器収集。