トップアスリートやシンガー・ソングライターらが相次いで闘病を公表した「白血病」-。血液のがんであるこの病気の発生率は、年々上昇しているといいます。その病因は不明のケースが多く、検査、治療も長期間に及びます。米国の血液内科マニュアルを独学で修得した、自称「さすらいの血液内科医」、東京品川病院血液内科副部長・若杉恵介氏(48)が「白血病を知ろう!」と題して、この病気をわかりやすく解説します。

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「慢性リンパ性白血病」について、まず患者数が少ないのです。わたしも診察している患者さんはいるにはいるのですが、多くの方は「治療はしないで、経過観察」と対応されています。これまで治療に入ったのは、ほんの数人です。

欧米では罹患(りかん)率が比較的高く、わたしが診た患者さんのうち2人は、欧州の方でした。分類されるステージ的には初期なので対応は「経過観察」でしたが、説明は苦労しました。

白血球が増えていても症状は軽く、貧血や血小板減少がなければ経過観察という方向性です。経過観察しているうちに患者さんが80歳を超えて、いざ貧血になっても、治療の利点がないとのことで、やっぱり経過観察という対応が多かったです。

多くの方がB細胞性(リンパ球の一種)のリンパ性白血病なので、例の「CD20」(白血球の細胞表面の分子に結合する抗体の分類)に対する「リツキシマブ」などの抗体療法で効果が期待できますし、「フルダラビン」というプリンアナログ系(細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果を表す)という薬を使ったり、腫れた脾臓(ひぞう)に放射線を当てたりするのですが、貧血になってから治療するとかえって貧血になって大変です。

ここ数年で、検出された染色体異常に基づいて、抗がん剤の「イムブルビカ」というブルトンキナーゼ阻害薬を内服するのが、優先される方向にあります。それでも、基本は様子見が多いです。

病気自体も穏やかな経過が多いですが、慢性リンパ性白血病の患者さん自身も、人柄も穏やかで、かつ細やかな方が多いと感じています。

慢性リンパ性白血病そのものの発病に、恐らく「ウイルス」が関与していると個人的には考えていますが、推測にすぎません。慢性リンパ性白血病の仲間としては、有毛細胞性白血病(ヘアリーセル白血病)の方がいます。結構、診断するのが大変です。これもHTLV-2(ヒトT細胞白血病ウイルス2型)というウイルスの関与が示唆されていましたが、日本で診断される有毛細胞性白血病も亜型だそうで、あまりよく分からないのが現状です。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として同愛記念病院勤務。米国の血液内科マニュアルに準拠して白血病治療をほぼ独学で学ぶ。多摩北部医療センターなどを経て、18年から現職の東京品川病院血液内科副部長。自称「さすらいの血液内科医」。趣味は喫茶店巡りと読書。特技はデジタル機器収集。