トップアスリートやシンガー・ソングライターらが相次いで闘病を公表した「白血病」-。血液のがんであるこの病気の発生率は、年々上昇しているといいます。その病因は不明のケースが多く、検査、治療も長期間に及びます。米国の血液内科マニュアルを独学で修得した、自称「さすらいの血液内科医」、東京品川病院血液内科副部長・若杉恵介氏(48)が「白血病を知ろう!」と題して、この病気をわかりやすく解説します。

  ◇   ◇   ◇  

簡単に言うと、これは「がんの治療を行ったことに起因する白血病」です。大きく分けて(1)アルキル化剤などによる(2)トポイソメラーゼ阻害剤による(3)放射線に由来する(4)その他、に分けられます。

発症率は、量や基礎的病態にも左右されますが、1~2%の範囲です。安心していただくために言うと、98%心配しなくていいでしょう。

逆に「がん治療歴」がある白血病の患者さんは、もともとの白血病の発症確率から計算すると、ほぼ治療関連白血病と考えられます。ですが、白血病細胞を顕微鏡でいくら見ても「前の治療のせい」とは書いてありませんし、白血病を患って動揺している患者さんに「前の治療のせい」と言ったら、本人も家族も前の治療医に文句しか言わないでしょう。

現在は説明と同意が基本ですので、治療前のたくさんの書類の中に、ほんの1行程度、「抗がん剤による二次発がんについて」と書いてあるとは思いますが、携帯電話の契約書と同じで、誰もそこまで目を通していないでしょう。

そこで、何となくは感じていても「白血病ですね、原因はわかりませんが、まずは…」と治療に入ります。もともと1つのがんを乗り越えた人たちですし、高年齢層でもあります。かつ、持病がないほうが少ないため、通常標準治療とは異なる薬の組み合わせで対処します。

そのうえで、染色体や遺伝子の情報が出てきてから「もしかしたら、前の治療関連が…」と話を切り出します。患者さんに、心穏やかに治療を受けていただくためです。

AI(人工知能)の「ワトソン」が治療法を提案したことで有名な「治療関連白血病」ですが、がんの治療成績が良くなると、当然増加すると思います。治療成績が上がった「がん」は、細胞障害性のない(二次発がんの少ない)治療に切り替えていくべき時代なのでしょう。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として同愛記念病院勤務。米国の血液内科マニュアルに準拠して白血病治療をほぼ独学で学ぶ。多摩北部医療センターなどを経て、18年から現職の東京品川病院血液内科副部長。自称「さすらいの血液内科医」。趣味は喫茶店巡りと読書。特技はデジタル機器収集。