トップアスリートやシンガー・ソングライターらが相次いで闘病を公表した「白血病」-。血液のがんであるこの病気の発生率は、年々上昇しているといいます。その病因は不明のケースが多く、検査、治療も長期間に及びます。米国の血液内科マニュアルを独学で修得した、自称「さすらいの血液内科医」、東京品川病院血液内科副部長・若杉恵介氏(48)が「白血病を知ろう!」と題して、この病気をわかりやすく解説します。

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「標準療法」は、主にがん治療において使われる用語です。現時点でその疾患あるいはその状況で最も適正と考えられる治療法のことです。例えば、進行期のホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫の1つ)における「ABVD療法」などが、それです。

標準療法というと、何か天丼なら「並」の感じが出てしまいます。患者さんからも、「標準療法じゃなくて、最高治療を」と言われたこともあります。英語で「スタンダードセラピー」と表現するとしっくりくるし「この治療がワールドスタンダードだ」と言うと、かっこいいですが…。やはり「世界標準治療」や「今、一番いい治療」という日本語だと、表現がいまひとつかもしれません。とはいえ、繰り返しますが、標準治療とは、その病気に現時点で、最も勧められる治療です。

合併症がない65歳以下の方の場合、急性骨髄性白血病の寛解導入療法(最初に行う治療)の標準療法は、アントラサイクリン系抗がん剤3日間点滴とシトシンアラビノシド7日間持続点滴からなる「3+7療法」とされています。アントラサイクリン系をダウノルビシンにすれば「D4療法」、イダルビシンにすれば「IA療法」と呼ばれます。日本では、ほぼその治療が行われています。しかし、世界各国ではさまざまなバリエーションの「3+7療法」もしくは「その他の治療」が行われています。結論的には「患者さんが許容できる『3+7療法』、もしくはそれに準拠した治療」が行われればいいのだと思います。

急性リンパ性白血病の標準療法は、わたしの学んだ古い教科書には「AdVP療法」と書いてありますが、今はどうやらドイツBFMグループの治療が、標準療法となりそうです。予後良好な小児型以外は、化学療法の工夫だけではなかなか厳しく、幹細胞移植を見据えながらの対応になるでしょう。

いずれにせよ、標準療法は現時点での選択と考えてください。もちろん、医学の進歩により刻々と変わるものでもありますが…。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として同愛記念病院勤務。米国の血液内科マニュアルに準拠して白血病治療をほぼ独学で学ぶ。多摩北部医療センターなどを経て、18年から現職の東京品川病院血液内科副部長。自称「さすらいの血液内科医」。趣味は喫茶店巡りと読書。特技はデジタル機器収集。