世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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新型コロナの感染者・死亡者が増え続け、ただいま第3波に対する「緊急事態宣言」が続いています。私たち精神科医にとって、「コロナうつ」による自殺者が増えているのは辛(つら)いところ。では、どのような人がコロナうつになるのでしょうか。

60代の男性患者Aさんのケースを紹介します。Aさんは誰にでもある心配や不安が過剰になってしまう「不安障がい」があり、それが高じて昨年2月にうつ病に--。そして、2カ月後の昨年4月、緊急事態宣言に遭遇したのです。

「外に出ると新型コロナに感染する」という強い不安に襲われ、なかなか外出ができなくなりました。Aさんは4月に受診した時、私に「3カ月分の薬を出してください」と。月1回の受診を勧めましたが「どうしても」ということで3カ月分の処方箋を出しました。

3カ月後に来院したAさんは、軽症だったうつがかなり重症化していました。この3カ月間にAさんは、外に出るとコロナに感染すると、自宅に引きこもりっぱなしでした。運動しない生活、日光を浴びない生活、引きこもり生活ではうつになってしまいます。

そこで、十分に状態や日常生活を聞いた後に、私はAさんに提案をしました。<1>「受診は月1回にしましょう」<2>「家の近くの公園など散歩しやすいところでウオーキングをしましょう」と。その時に、ウオーキングをしたからといって感染することは絶対にない! ということをしっかり理解してもらいました。この2つを実践してくれたAさんは、1カ月ごとにどんどん改善しました。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)