世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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昨年4月、新型コロナを抑え込むために「緊急事態宣言」が出されました。そのころからビジネスマンの働き方が大きな変化を見せてきました。いわゆる、リモートワーク、在宅勤務が行われ始めたのです。このリモートワークも「コロナうつ」と大きく関係する点があります。

リモートワークについては良いという人もいれば、これが合わないという人もいます。「社交不安症」の人などは「自宅でリモートワークをしていると、仕事がどんどん進んでいい」と。社交不安症は、わかりやすく言うと「あがり症」です。社会的な場面や状況に身を置いた時に、強い不安や恐怖を感じるのが特徴。あがること自体は自然なことですが、社会生活に支障が出るほどとなると、これは社交不安症という病気です。この場合、人と会う必要がないので仕事ははかどります。

ところが、仕事では直接相手に会ってコミュニケーションを取らないと仕事がどんどん滞ってしまう人もいます。このリモートがダメという人は、家で仕事ができないだけでなく、コロナ禍とあって家から出られないので、どんどんつらい状態になります。また、仕事とのON、OFFのスイッチの切り替えもできなくなり、昼夜の感覚がなくなってしまいます。

このような状況から、“精神状態が悪化している人が多くなっているなー”というのが私の強く感じている印象です。これも“コロナうつへの道”だといえます。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)