世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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「コロナうつ」を発症する場合、その背景に「不安症」のあるケースが多いことは指摘してきました。不安症のある人、不安の強い人はうつ病が治りにくいということが多くの研究で明らかにされています。私は「何か変だ。うつ病なのかも…」と思って受診される患者さんには、等しく最初の問診前にうつ病と不安症を診断する「ひもろぎ式うつ尺度(HSDS)・不安尺度(HSAS)」の質問に答えてもらっています。

それだけではなく、その後も治療での状態を知るために行ってもらいます。うつ病が治ったあとに、不安が残存している人がいるのです。何とか日常生活はできていても、このようなコロナ禍では、再発しやすい。それは、「コロナに感染するのでは…」と思うと「人混みそのものが怖い」とか不安の症状がはっきり出てきます。そして、しばらくするとうつが再燃するのです。だから、患者さんに「不安がまだとれないねー」と、今度は不安に着目して治療をします。

昨年の4、5月頃は、不安の強い人は人と会うのが嫌なので、むしろ好意的にコロナをとらえている人が多かった。オンラインの方が人と会わなくていい、と。ところが、ここまで長く家に引きこもっていると、うつ症状がグンと悪化してくる人が昨年10月頃から増加。どちらの症状が患者さんの状態を悪化させているのか、それを「うつ尺度・不安尺度」でチェックしながら治療に生かしています。

この尺度を受診前に行って、より早い受診のきっかけにもしてほしいと思います。(取材=医学ジャーナリスト 松井宏夫)