世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

   ◇   ◇   ◇

精神疾患の診断は問診が基本で、それに「うつ尺度・不安尺度」を加え、さらに「診断補助ツール」を加えるケースが増えています。診断補助ツールとは、「CT検査」「血液検査」「脳波検査」「光トポグラフィー検査」などです。ただ、それはすべての患者さんに使うのではなく、症状に応じて、必要であれば問診に追加するという使い方です。

まずはCT検査-。身体にさまざまな角度からエックス線をあて、反対側に通り抜けた放射線量を測定し、その情報をコンピューターで処理して身体の輪切り画像を作り出します。その断層画像を見て、身体の臓器の様子を検査します。うつ病以外の器質的な疾患がないことを確認するために行います。

初診で受診された50代の男性患者さんです。待ち時間に「うつ尺度・不安尺度」のチェックをしてもらい、それをもって診察室に。「歩き方がスムーズではないなー」と患者さんを見ての私の印象でした。うつ尺度の身体症状などで問診を行っていると、「関係があるかはわかりませんが、最近歩きがスムーズではなく、つまずいたり、転びそうになったり」と、患者さんが付け加えました。

私は「特発性正常圧水頭症」を疑いました。水頭症は脳脊髄液の循環に障害がおこる病気で、特発性正常圧水頭症は先行する疾患がなく発症する水頭症で、原因がわかっていません。そこで、CT検査を行うと、脳室が拡大しているのが確認できました。それで、脳神経外科を紹介し、特発性正常圧水頭症と最終診断がつき、患者さんは手術で元気になられました。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)