体の中で脂肪をためる役割をしているのが「白色脂肪細胞」です。この細胞は内臓や皮膚の下、筋線維の周囲などあらゆる場所に存在し、成人では250億~300億個ほどあるといわれています。

体積の大半を脂肪滴(油滴)が占め、その他は通常の細胞と同じく細胞核や小胞体、ミトコンドリアなどの小器官も含まれています。太ると脂肪滴の部分が大きくなりパンパンに膨れ上がりますが、肥満が進行すると白色脂肪細胞の数自体が増えます。

では肥満がなぜ病気につながるかというと、この白色脂肪細胞の働きに理由があります。白色脂肪細胞は体の機能維持に必要なさまざまなホルモンなどの物質を製造する工場のような役割を果たしているのですが、肥満になると製造される物質の量が変化し、体に異常をきたしてしまうのです。

その中のひとつに、炎症に深く関わるTNF-αという物質があり、これが骨を溶かす細胞を活性化し、歯槽骨(歯を支える骨)が溶けてしまいます。歯周病と肥満の詳しい機序は解明途中ですが、多量に作られたTNF-αによって歯槽骨が溶かされるスピードが早まっているのではないかと推測されています。

BMIが高いだけでなく、体脂肪率が25%以上の人やウエストとヒップの比率が高い人も歯周病リスクが高まりますからご注意を。

また昨今では、肥満になると歯周病が進行するだけでなく、歯周病が肥満を引き起こす可能性も考えられています。マウスに脂質の高いエサを与え、歯周病菌の成分(内毒素)を注入したマウスは肥満になったが、毒素無しのマウスでは肥満にならなかったという報告があります。

歯周病菌内毒素は歯茎の血管から血流を通じて体中に運ばれますから、この因果関係が明らかになる日もそう遠くないかも知れません。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。