前回は、乳房切除後に手術で胸のふくらみを作る乳房再建の第1として「一次再建」と「二次再建」について紹介しました。今回は、第2として「自家組織による再建」と「インプラント(シリコーンの入った人工乳房)を使った再建」について紹介します。

自家組織による乳房再建には、患者さん自身の背中やおなかの筋肉と脂肪を移植する方法、おなかの脂肪を血管ごと移植し血管をつないで血流を保つ方法、最近は、太ももの脂肪を血管ごと移植する方法も行われていて、自然な温かみのある乳房ができます。どこの組織を持ってくるのがよいかに関しては、1つには乳房の大きさが関係してきます。乳房が大きくなければ、背中や太ももからの移植も可能です。乳房が大きい方の場合は、おなかからの移植がお勧めです。移植するのはへその下あたりの脂肪。ここの脂肪を取るとおなかが引っ込むというメリットがありますが、へその下に25~30センチ程度のキズがついてしまいます。おなかにそれまでに受けた手術のキズがあるとか、今後お子さんが欲しいという方には不向きです。

一方、インプラントを使った再建は、他の場所にキズがつくことはありませんし、手術時間が短いなどのメリットがあります。もちろん、デメリットもあります。

インプラントでの再建では、カプセル拘縮という変形が生じて、入れた人工乳房の形がくっきりと目立ってしまったり、インプラントを入れた胸は形が変わらないため将来的に左右差が出てきたりすることがあります。また、術後何年かたってから人工乳房の周辺に「悪性リンパ腫」が0・03から0・3%程度と非常にまれですが、発生することが近年分かってきました。また、インプラントの耐用年数は10~15年程度と言われています。

医師あるいは病院によってどちらを得意としているか、自家組織ができない病院もありますので、十分に話し合って選択してください。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)